フェラーリのジョン・エルカーン会長が、サンパウロGPでのダブルリタイアを受けて異例の厳しい言葉を発した。会長はレースを「大きな失望」としつつ、メカニックとエンジニアの仕事ぶりは評価に値すると強調したうえで、「残りは水準に達していない。ドライバーはドライブに集中し、発言は控えるべき」と断じ、シャルル・ルクレールとルイス・ハミルトンに明確な改善を求めた。イタリアの多くのメディアがこの発言を速報し、イタリア国内を中心に波紋が広がっている。

レース自体は不運と混乱が重なった。ルクレールはスタート直後、ピアストリとアントネッリの接触に巻き込まれて早々に戦列を去り、ハミルトンはサインツやコリピントとの接触でマシンに損傷を負い、ペナルティ消化後にリタイアした。これで今季三度目のダブルDNFとなり、アクシデントとはいえチームの実行力に改めて疑問符が付いた。

今季のフェラーリは序盤の手応えを活かせず、コンストラクターズ選手権でも後退している現実がある。エルカーン会長は先月、フレデリック・ヴァスール代表への「全面的信頼」を公に示し結束を呼びかけていたが、今回の発言は矛先をドライバーの覚悟と規律に向けた格好。名門再建の猶予は少なく、残るラウンドでの立て直しと、2026年新規則に向けた体制の再整備が急務である。会長の強硬メッセージは、責任の所在を曖昧にしないというトップの意思表示となった。