
ニコ・ヒュルケンベルグがついにF1キャリア初の表彰台を獲得した。舞台は雨に翻弄されたイギリスGP。彼自身は「現実になる瞬間があった」と語り、そのレース展開を振り返った。一方、ライバルたちもこぞって彼の快挙を称えた。
前戦・前々戦と好調だったザウバーだが、シルバーストンでの週末は厳しい出だしとなった。ヒュルケンベルグは最終列からのスタート、実質19番手だった(フランコ・コラピントがピットレーンスタート)。だがレース前半には5位までポジションを上げていた。

背後からはルイス・ハミルトンが迫っていたが、間にピエール・ガスリーがいたことで若干の猶予が生まれた。ヒュルケンベルグは見事にストロールを抜き、3位に浮上。その間にハミルトンもガスリーとストロールを交わして4位につけた。
しかし、タイヤの選択が命運を分けた。ハミルトンはソフト、ヒュルケンベルグはミディアムを選択。さらにハミルトンはピットアウト時にミスを犯し、5~6秒をロス。これが決定的な差となり、ヒュルケンベルグはそのままポジションを守り抜いた。
F1参戦239戦目、ついに念願の表彰台に到達したヒュルケンベルグ。感極まる中、彼はその瞬間を次のように振り返った。
「嬉しいけど、いろんなことが一気に押し寄せてきて、まだ処理しきれていない。すごく濃密なレースだった。ランドが言っていたように、こういう天気の中での走行は本当に極限状態で、ずっと壁のギリギリを歩いてるような感覚なんだ。限界を探りながらプッシュしていくのはとても緊張感がある」
「終盤はルイスとの遠距離バトルになったけど、幸い彼が届かずに済んだ。すべてがうまく噛み合って、ホッとしているし、すごく嬉しい。昨日はグリッド最後方だったからね。それが今日こうなるなんて、正直言って非現実的に感じる。すべてを受け止めるには数日かかりそうだけど、幸い次のレースまで2週間あるから、この結果をしっかり楽しんで祝いたい」
表彰台を意識したのはいつかと問われると、彼はこう語った。
「スリックに戻る前のタイミングだった。僕がランスを抜いたあと、ルイスもすぐ彼を交わした。でもその後、インターがどんどん摩耗してきて、僕は差を広げられた。これはいける、と思ったんだ」
「ルイスより1周遅くスリックに替えた判断も大正解だった。その差が10秒近くになって、あれが決定的だった。そこから先の10周ちょっとはものすごく長く感じたけど、“これはいける”という気持ちで、コースにとどまりながらプッシュし続けた」
表彰台での心境やレゴのトロフィーについて問われると、笑顔でこう答えた。
「最高だったよ。表彰台でどうするか、まだちゃんと覚えていた。ジュニア時代はたくさんあったけど、F1ではずっと待っていたからね。レース展開が早すぎて、まだ実感が湧いていない。でも、たくさんの人から祝福されて、嬉しさと安堵が一気に来た」
「娘も遊べるし、レゴは好きだよ。もちろん銀や金のトロフィーも悪くないけど、文句はないさ」
レース戦略については、こう振り返った。
「確かに、インターからインターに替えた場面があった。最初のセットは乾いてきて消耗していた。でもチームが“雨が来る”って言ってきて、それを信じて深く考えずにピットに飛び込んだ。そしたら本当に降ってきて、完璧なタイミングだった」
「今日のすべてのピットストップが理想的だった。こんなことは滅多にない。ランスの後ろでは、彼も速くて簡単には抜けなかったけど、最終的にインターの摩耗で僕の方が優位になった。あの時点では表彰台のことなんて考えてなかった。ただ、走り続けてミスをしないことだけに集中していたんだ」
ドイツGPのクラッシュ(2019年、ルノーをドライブしていて、母国ホッケンハイムで4位走行中でのクラッシュ)を思い出したかと問われると、彼は微笑みながら一言。
「うん、思い出したよ。でも、今日は最高だった」
「僕が車から降りたとき、最初に駆け寄ってきてくれたのはマックスだったんだ。マックスみたいに最初からこういう結果を出したかったけど、僕のキャリアはちょっと違った道のりだった。信じ続けるしかなかったんだ」
フェルスタッペン:「本当に素晴らしい。彼のために嬉しいよ。長くF1にいて、何度も惜しかったけど届かなかった。今回やっと報われたね。ニコは冷静で、何ができるか自分で分かっているし、F1以前からずっと実力を示してきた。ようやく報われたという感じだ」
ピアストリ:「ニコ、おめでとう!今日一番のハイライトだね」
アロンソ:「初表彰台、本当に嬉しいよ。ずっと速いドライバーなのに、まともなマシンを与えられてこなかった。今日は心から彼のことを祝福したい」
サインツ:「彼はすごく安定したレースをしたに違いない。正直、今まで“なんで表彰台がないのか”って話があったけど、僕にとってはそんなことどうでもよかった。僕は彼を常にトップ5のドライバーだと思っていた。彼の才能とレース運びは素晴らしい。僕は彼の元チームメイトだったから、表彰台がなかったのは単に状況の問題だった。今こうしてその声を黙らせられたことが本当に嬉しい」
ガブリエル・ボルトレート:「ニコに心からおめでとうと言いたい。彼もチームもこの結果にふさわしい。これまでで最高のチームメイトだったよ。レース後、無線はなかったけど、みんなでジャンプして叫んで、すぐ表彰台まで走ってハグしに行ったんだ。最高の瞬間だった」
ハミルトン:「3位も届きそうな位置だったけど、ニコの走りは本当に見事だった。彼の初表彰台を称えたい」
ルクレール:「信じられなかった!最後の2〜3周は一人で走っていたから、大画面を見ていたんだ。緑のマシンを見て、“何が起きてる?”って驚いたよ。ニコだったんだね。すごいレースをしたに違いない」
オコン:「ニコ、おめでとう。自分にもチャンスはあったと思うだけに悔しいけど、ニコはよくやったよ」
アルボン:「最高だった。ニコは本当に好きなドライバーのひとりで、彼の表彰台は完全にふさわしいものだ。彼の初表彰台だって、思わず確認しちゃったよ。もうとっくに取ってると思ってたくらいだから」
ガスリー:「マジかよ!すごいな。ニコ、おめでとう。やっとだな、良かったよ(“No way! That’s nice, congrats to Nico. Been a longtime coming, so good for him.”)」