
ルイス・ハミルトンは、フェラーリに提出した文書について「命令ではない」と強調した。一方でシャルル・ルクレールは、自身もそのプロセスに関わっていることを明らかにした。
フェラーリ加入1年目のハミルトンにとっては学びの多いシーズンとなっている。しかし、その中でチームを前進させるための取り組みも止めてはいない。ベルギーGPの際には、ジョン・エルカーンやベネデット・ヴィーニャを含む首脳陣と長時間の会議を行い、その場で自らまとめた文書を共有したと明かした。
それは今季だけではなく、2026年からの大改革を見据えた動きだ。内容は指示ではなく、組織や車体開発の改善点を示す提案だった。ハミルトンはフェラーリに大きな可能性を見出しており、そのために自ら考えをまとめ上げてチームに提示している。
一方のルクレールも「僕ももちろん関わっている」と語り、すでに長年にわたりアイデアをチームと共有してきたと強調した。
ハミルトンがしたこと
「そうだね、ベルギーの前に2週間工場にいたんだ。各週2日ほど滞在して準備をしていた。前戦での状況を振り返り、変えるべき点を洗い出すためだ。僕は多くの会議を開いた。ジョンやベネデット、フレッドとも何度も会ったし、ロイクをはじめ各部門の責任者とも座って話した。来季のエンジン、フロントサスペンション、リアサスペンション、このマシンで抱えている問題などについてね。僕は文書も送った。今年の序盤の数戦を終えた段階でチームに1つ大きな文書を提出したんだ。
その後、短い休みにさらに2つの文書を送って、再び現場で議論した。内容の一部はチームが改善すべき構造的な課題について。もう一部はマシンそのものだ。今年のマシンの問題点、来季に持ち越すべき部分、変えなければならない部分をまとめた。2026年マシンの初期開発にも取り組んだよ。30人のエンジニアが集まり、1人ひとりと議論した。大きなプッシュだった。あとはトレーニングだ。ちょっとやり過ぎなくらいにね」
「理由は、このチームには大きな可能性があると感じているからだ。情熱の面では他に比べものがない。ただし、巨大な組織だからこそ多くの歯車があり、その全てが完璧に噛み合っているわけではない。だからこそフェラーリは長く成功を逃してきたと僕は思う。僕の仕事は全ての分野を見直し、チーム全員を挑戦させることだ。特に決断を下す上層部に対してはね。過去20年を見れば、キミ、フェルナンド、セバスチャンと素晴らしいドライバーが在籍してきたのに、タイトルは取れていない。僕はそれを繰り返すつもりはない。だからこそ全力を尽くしている。僕は他の2つの偉大なチームで経験を積んできたからね。
同じ道を歩き続ければ結果も同じだ。だから僕は新しい挑戦を投げかけている。チームは非常に前向きに応えてくれている。マーケティングやスポンサー対応、エンジニアの働き方など多くの面で改善が進んでいる。まだ課題は多いけれど、チームは変わろうとしているんだ。僕は組織の中に味方を作り、士気を高めていきたい。僕は勝つためにここにいる。ルクレールほど時間が残されていないからね。だからこそ勝負の時だ。フェラーリは未来に複数回タイトルを獲得できると本気で信じている。すでに偉大な歴史を持つチームだが、僕の在籍中に成し遂げたい目標はただひとつ、勝利だ」
「命令じゃない。ただのアイデアなんだ。“こうしてみたらどう? これを試した?”というような提案だ。取り組み方を変えれば、もっと楽にできるかもしれないし、より良くできるかもしれない。ただ話し合っているだけなんだ。フレッドをはじめ、チームはとても前向きに受け止めてくれている」
ルクレールも関わっているとコメント
「もちろんだ。僕たちは一緒にフェラーリを強くするために取り組んでいる。ルイスが準備した提案があり、僕も自分のポイントをまとめる。そして大きな会議の場で一緒に議論するんだ。だから全員が同じ方向を向いていて、ストレスはまったくない。ルイスは違う文化、違うチーム、長年メルセデスで戦ってきた経験がある。その視点から指摘される点は確かに興味深い。ただ、僕がこれまで組んできたチームメイトと大きく違うわけではない。みんなチームを良くするためにアイデアを出し合う。それを文書にするかどうかの違いだけだ。
これは今に始まったことではない。シーズン最初から意見を出し合っているし、慣れるべきこと、変えるべきことを探していくのは常にあるプロセスだ。今回ルイスが初めて口にしたから話題になっているだけで、特別なことではない。僕は文書を作ってはいないが、マラネロに戻るたびにチームと会議をして次に取り組む課題を話し合っている。ドライバーそれぞれにやり方があり、僕は僕の方法でフィードバックしている。それで外れているわけじゃない。僕も間違いなく関わっている」