F1オランダ・グランプリ、アイザック・ハジャーがデビューイヤーで表彰台に登った。ハジャーは、デビュー戦のフォーメーションラップでスピンを喫し、不名誉なかたちで話題になっていたが、その後は日本8位、モナコ6位、スペイン7位と着実に経験を積み上げ、RBのマシン特性を汲んだ走らせ方を身につけてきた。まだ少年の面影が残る20歳が、今季表彰台に登ると予想した者は多くないはずだ。角田裕毅も、今季自分がRBに残っていれば、と考えているだろう。また、フェルスタッペンによるRBマシンテストの噂が浮上したほどに、今季のRBはそつなくタイムを出せるマシンに仕上がっている。

雨雲と3度のセーフティカーがかき回したオランダ・グランプリで、ハジャーは乱されることがなかった。流れを変えたのはフェラーリ勢のアクシデント、そして表彰台のチャンスを決定づけたのは終盤、ノリスのリタイアだった。先頭で逃げ切ったピアストリ、地元の声援を背にしたフェルスタッペンの背中を、ハジャーは無理に追わず、必要なときだけ牙を見せた。結果は3位。初表彰台は“混乱の幸運”ではなく、タイヤをいたわり、再スタートでの位置取りを外さず、ピットの判断を信じ抜いた総合力の証明だった。

この一戦でハジャーは生き残る速さを見せた。ポイントを刻む職人的な粘りに、決める局面での大胆さが加わったとき、不安定なルーキーではなく、グリッドの秩序を変える存在になる。モンツァ以降、彼がどれだけ「コンスタントに速い日」を増やせるか。初表彰台の余熱が冷めた先に、真価が問われる季節がやって来る。