2024年を好調に終え、2025年はランド・ノリスの年となるかに見えたが、状況は単純ではなかった。チームメイトのオスカー・ピアストリが力を発揮。昨年振るわなかったサーキットで活躍し、得意なコースでも好調を維持し冷静にポイントを重ねた。車のアップデートでピアストリは快適になったが、ノリスは調子が安定せず、特に予選ではリズムを掴めずにミスを犯し、レースでも追い上げる展開となっている。

その結果、ピアストリがノリスを8ポイント差でリード。しかし最近はノリスも予選で本来の調子を取り戻しつつある。マクラーレンはサスペンションに改良を加え、その恩恵がノリスには見られる一方、ピアストリは使用を見送っている。

ノリス自身は変化を認めつつも、メディアがそれだけを強調するのは行き過ぎだと考えている。チームの努力には敬意を示しているが、問題が完全に解消されたとは思っていない。

「正直言って、だれに聞かれても、今これが良くなったかどうかははっきり言えないんだ。僕らはこれが正しい方向に進むかもしれないと思って試したにすぎない。それほど小さな変更だった」

「これが速さにつながるとは限らない。タイヤやステアリングの感覚を変えるかもしれないけど、サーキットごとに変わるし、走行セッションごとにすぐ変えられるものでもない」

「だから、チームがこれで良くなると言ってくれるのは嬉しいし、感触が良くなったと思う。でも、はっきり“とても良く感じる”とは言えない。オーストリアでは確かに良かった。カナダは例外だ。あそこでの車は常に挙動が激しくて評価しづらい。でも少し手応えを感じた。ただ昨年のような“完全な感覚”に戻ったとは感じていない」

「でも、もちろん他にも変わった部分は多い。チームは懸命に取り組んでくれているし、僕もシミュレーターで試しながら“語彙”を増やして理解を深めようとしている。僕の経験から、昨年は感覚的な面で手ごたえを感じていた。だから、そうじゃない今は不満だったし、それを率直にチームに伝えた。そしてチームも僕も改善に取りかかった。結果としていくつかの改善があり、今はそのおかげで満足している。でも“これで完璧だ”とは言えない」

「正直、サスペンションの話はみんなが言いすぎていると思う。効いてるかもしれないけど、ほんの何百分の一かの話だろう。それを数値化するのは不可能だ。この変更が感触に良い影響を与えるかもとチームが思ってくれたのはありがたい。でも、それが速さにつながるかは保証されていない」

「僕は2勝している。カナダも速かった。でもそれを全部サスペンションのおかげと言うのは僕には違う。トラック外での僕自身の頑張り、チームとの連携、それをもっと重視したい」

「同時に、“もし前の仕様でも同じ結果だったかもしれない”とも思える。いつか連続テストできれば分かるだろう。最近は手応えもあるけど、それは車の改良だけじゃない。僕のドライブの改善や感覚を探る作業の成果だ」

「でも確かに車も改良された。先週末もアップグレードがあったし、それが助けになっている。ここで30秒差、先週も20秒差で勝った。だから車も良い。でも僕はむしろ、自分の努力の結果だと言いたい」

「今は“より快適”とは言えるけど、“完全に快適”とは言えない。難しいのは他と比べられないこと。僕は僕の過去の経験とマクラーレンしか知らない。他のドライバーがどう感じているかは分からない」

「僕は多くをステアリングを通じて感じ取るタイプだ。視覚や体の感覚も使うけど、一番敏感なのは手、ハンドルだ。それが鈍れば、最大限に車を引き出せない。だから不満だし、快適ではない。そこを今年どう取り戻すか考えている」