タイのF1カレンダー参入計画が、新たな政治的混乱に直面している。

今年初め、F1 CEOのステファノ・ドメニカリは、バンコクで行われた高官との会談でタイの計画を「印象的だ」と評価した。タイはわずか数か月で基本合意から閣議承認まで進め、首都に新設するストリートサーキットでのF1開催に向け、5年間で10億〜20億ドル規模の資金投入を決定していた。

しかし、その計画に暗雲が立ち込めている。

今年3月にドメニカリとともに代表団を率いたペートントーン・シナワトラ前首相が、数日前に憲法裁判所によって失職したのだ。判決理由は「倫理規定違反」と伝えられている。

その後任として、ベテラン政治家のプームタム・ウェーチャヤチャイが首相代行に就任した。F1にとっては、この政権交代がバンコクGP計画への継続的支援に影を落とすことになった。

タイ政府はすでに公的資金の拠出を承認しており、閣僚たちは「経済効果は計り知れない」「数千の新規雇用が生まれる」「世界的な注目度はシンガポールに匹敵する」と豪語していた。サーキット設計や環境影響評価はすでに進行中であり、プランナーたちはチャトゥチャック公園周辺のランドマークを中心に検討を進めている。