
モハメド・ビン・スライエム現FIA(国際自動車連盟)会長は、2025年12月のFIA総会での再選がほぼ確実な情勢になっている。最大の理由は、FIA候補者リストにおける南米代表枠をめぐる地政学的な後押しだ。
FIAは選挙立候補者に対し、7名のスポーツ副会長を地域別に割り振る制度を定めており、南米枠はそのうちの1枠である。公表されたWMSC(世界モータースポーツ評議会)候補者29名の中で、南米出身者はブラジルのファビアナ・エクレストン(Fabiana Ecclestone)ただ一人であり、彼女は現体制の一員として再選キャンペーンに参加しているという。
このため、他の立候補希望者は南米の副会長枠を埋めようにも選定候補が存在しない構造になっており、実質的に対抗馬を抑え込む形になっている。
また、南米自動車連盟11団体すべての会長らが連名でスライエム会長支持の書簡を送付したという報道もある。この“統一戦線”は、ほかの候補者が南米の支持を割り崩す余地をほぼ封じるものであり、スライエム側の再選工作を強固なものにしている。
ライバルとされたティム・メイヤー(アメリカ人の実業家であり長年FIAの職員)、ローラ・ヴィラール(スイス人のレースドライバー)、ヴァージニ・フィリポット(ベルギー人のジャーナリスト、ドライバーで元モデル)らは立候補の意向を表明しているものの、まだ正式な推薦チーム(副会長リスト)を公表できておらず、南米枠を含む条件を満たせる体制構築に苦慮していると伝えられる。
こうした事情を背景に、ロイターなどの国際報道機関は「スライエムの再選は無投票になる可能性が高い」と報じている。また、これには批判的な声もあり、「実質的にライバルを排除する選挙制度改変だ」との指摘もある。
最終的な立候補登録期限は10月24日、選挙日程は12月12日で、この時点で複数陣営が条件を満たせなければ、スライエムの再任はほぼ確定的となる見込みだ。