チーム消滅から10年以上を経て、ケータハムの名前が再びF1グリッドに戻ってこようとしている。

その動きを主導しているのは、24歳のクウェート人投資家サード・カシス=モハメド率いる投資会社「SKMキャピタル」だ。彼は「SKMレーシング」という新チームを立ち上げ、ケータハムの名をF1に復活させようとしている。

ケータハムは2012年にグリッドに登場した。トニー・フェルナンデスがケータハム・カーズを買収したことで、前年まで「ロータス」の名で参戦していたチームがリブランドされた。

しかしチームはロータス時代を含め1ポイントも獲得できず、資金難により2014年シーズンを最後に撤退した。その後2021年に日本のVTホールディングスがケータハム・カーズを買収している。

だが今、カシス=モハメドがその名をF1に呼び戻そうとしている。彼のターゲットは2027年のF1参戦で、カスタマーパワーユニット契約を前提としている。

F1を取り巻く環境はケータハムが消えた頃から大きく変化した。予算上限制度の導入により大規模チームと小規模チームの格差は縮小し、さらにF1人気が急上昇したことで財務的な安定性も格段に増した。

投資家カシス=モハメドはSportstarのインタビューで次のように語った。

「今のF1は、明確な財務基準と安定した技術フレームワークのもとで運営されていて、投資に適した環境だ。僕たちは最高峰のエンジニアリング、グローバルな舞台、そして予測可能なコスト管理が交わる点に魅力を感じている」

「ケータハムという名は多くの人に記憶されているが、今のグリッドには存在しない。ブランドライセンスを使うことで、消滅した企業そのものやその負債を復活させることなく、マーケティングの立ち上げを大幅に短縮できる」

「我々の計画には二つの選択肢がある。既存チームの買収か、あるいは次のFIA申請プロセスで、資金力がありコンパクトな顧客チームとして長期的なPU供給を前提に申請することだ」

2027年参戦の道のりは険しい

しかしその道は容易ではない。FIAとF1が設ける厳格な基準を突破する必要があるからだ。その難しさは、アンドレッティとキャデラックが経験した道のりを見れば明らかだ。FIAからの承認は比較的早かったものの、F1運営会社(FOM)は当初これを拒否した。最終的にゼネラルモーターズが将来的にエンジンメーカーとなることを約束して初めて、キャデラックF1の2026年参戦が認められた。

一方で、SKMレーシングには大手自動車メーカーの後ろ盾がない。ケータハムの名前を復活させるだけでは、12番目のチームとしての承認を勝ち取るには不十分とみられている。

FIAのモハメド・ビン・スライエム会長はGMの参入を受け、次は中国からのチーム参入に強い関心を示している。