
2026年のF1参戦を目指すキャデラックは、初年度から競争力を確保するためフェラーリとの実務的な協力関係を拡張する動きを見せている。両者は2024年末に、2026年からのパワーユニットおよびギヤボックス供給で複数年契約を締結しており、イタリアの名門がアメリカチームの立ち上げ期を技術面で支える構図だ。これにより、キャデラックは独自PUの本格稼働を視野に入れつつも、参入初期は完成度の高いフェラーリ製PUを核に戦える見通しとなったのである。
さらに2025年の準備段階では、テスト資産や技術支援の活用を含む異例の連携が取り沙汰されている。報道によれば、キャデラックは初走行の前倒しやデータ取得の効率化を狙い、フェラーリ側の旧型マシンの貸し出し・テスト支援体制を用いた事前テスト計画を詰めているとされる。実現すれば、新規チームとして最も難易度が高い「運用体制の立ち上げ」と「信頼性評価」のハードルを一気に下げ、2026年開幕時点での即戦力化に直結するだろう。
この協力は、PUサプライヤー関係を超えて実戦準備を共に進めるという点で異例だ。フェラーリにとっては顧客供給の収益化と技術的フィードバックの獲得、キャデラックにとっては開発・運用の学習曲線を短縮できるメリットがある。一方で、競合チーム間の情報遮断やテスト規定順守など、透明性を担保するガバナンスが欠かせないのも事実だ。