ガブリエル・ボルトレートは、なぜ自分が後方に沈み勝利できていないのかを一部のブラジル人F1ファンが理解していないことについて、特に気にしていないと語った。

南米には情熱的なファンが多く、母国ドライバーを全力で応援する姿勢は美徳であり、同時に試練にもなる。もはや伝説となったピケやセナ、最後に表彰台の常連だったブラジル人はルーベンス・バリチェロやフェリペ・マッサだった。前方を走って勝利や表彰台を手にしていればそれは追い風となるが、後方に沈んでいると状況は一変し、受け止め方も難しくなる。

ボルトレートは、レッドブル・リンクでは堅実な走りで8位でフィニッシュ。自身初のF1ポイントを手にした。ザウバーのパフォーマンス向上とともに、ボルトレートはハジャー、ベアマン、アントネッリといった他のルーキーたちと同様に、自らの実力を少しずつ示し始めている。ただし、それでも彼自身にとっては十分ではないようだ。

「たしかブラジルの最後のF1ドライバーはマッサだったよね?たしか8年くらい前だったと思う。もちろん、僕たちは昔たくさんF1で勝ってきた国だ。でも、実際にF1でブラジル人ドライバーが勝つところを見たことがないファンも多いんだ。そういう人たちは比較的新しいファンで、たとえば20年前にサッカーでブラジルが勝ったのを見て、それ以来、またスポーツで勝つ喜びを求めてるんだ。でも、最近はサッカーのワールドカップでも優勝できてないし、モータースポーツでもタイトルを獲れていない。どれだけ活躍しても、タイトルは獲れない状況が続いている」

「ブラジルのファンは本当に感情豊かだよ。それがブラジルという国なんだ。そして、それが僕が母国を愛している理由でもあるんだ。でも、F1というスポーツの構造や、マシンごとの違いを理解してくれているファンもいる。ジュニアカテゴリみたいに全員同じシャシーを使って、セッティングだけで勝負する世界じゃない。F1ではクルマを開発できる。そういうことを理解してくれている人たちは、今の僕の状況をちゃんとわかってくれてるんだ」

「そういうファンは、毎レースごとに僕が良くなっていくことを期待してくれているし、経験とともに成長していくのを見守ってくれている。でも、F1のことをよく知らない人たちは、1980年代のセナのように、どんなマシンでもモナコの雨の中で勝てると思ってしまってる」
「でも、今のF1はそんなに簡単なものじゃない。できないとは言わないけど、簡単にはいかない。だから、そういうコメントを受けても僕は気にしてないよ。僕はただ、自分がコース上でベストを尽くすことだけを考えているんだ」

ボルトレートはF1ルーキーシーズン前半戦を振り返りながら、すでに予選ペースでは一歩前進できていると感じており、決勝ではさまざまな状況に慣れ、ニコ・ヒュルケンベルグからも多くを学んでいるという。

「シーズン序盤から、1周のスピード自体はあったと思う。オーストラリア以降はすでにけっこう快適に感じてたよ。そこからは少しずつ進化していて、クルマがどう動くのか、どうすれば速くなるのかを理解し始めてる。それはドライバーとしての自分の面からもそうだし、セットアップの面からもね。レースでは、僕の隣にすごく経験豊富なチームメイトがいる。彼はレース全体の流れを僕よりも広く見渡せてると思う。彼がレース序盤でどんな戦略を取っているのか、タイヤをどうマネジメントしているのか──そういう部分は経験からくるものだと思う。ルーキーとして、僕はまだまだ学んでいる段階だ。そういうミスをしながらじゃないと、学べないこともあるからね」
「ニコはレースの中で本当に良い仕事をしているよ。特に1周目のポジショニングがうまい。僕たちはいつもすごく近いグリッドからスタートしてるんだけど、それでも彼は最初の2つのポジションで差をつけてくる。そしてそれが、レース全体で大きな違いになるんだ。そういうわけで、今のところ自分の1周のパフォーマンスには満足してる。そして今、決勝ペースに関しても正しい方向にステップを踏めていると感じている」