
4度のF1ワールドチャンピオン、セバスチャン・ベッテルは、F1が2026年に導入する新レギュレーションが本当に魅力的なレースをもたらすのか、いまだに疑問を抱いている。
ドイツ人チャンピオンは、この大改革を2014年に導入されたハイブリッドパワーユニットと比較した。当時は莫大な開発費がかかったにもかかわらず、オン・トラックで得られたものはごくわずかだった。
2025年シーズンのこの時点で、すでに多くのチームはF1 2026に向けた新マシン開発にシフトしている。シャシー、空力、そしてパワーユニットまで全てが刷新される。PUは内燃機関と電動モーターを半分ずつ組み合わせ、完全に持続可能な燃料で走らなければならない。
さらに可動式エアロが解禁され、DRSのようなオーバーテイク補助は不要になるとされる。車重も減り、より軽快なマシンになるはずだ。
しかし、すべての関係者がこのルール改正を歓迎しているわけではない。すでにシミュレーションで2026年仕様を体験した現役ドライバーからも「楽しくない」「少し悲しい」といった声が上がっている。そこに加わったのがベッテルの懐疑的な声だった。
ドイツの専門誌『Auto Motor und Sport』のインタビューで、ベッテルは新レギュレーションに対する一連の懸念を語った。
「2026年の改革は、2014年のハイブリッド導入と似ていると思う。電動化という発想は原則的には良かったが、その実装は間違っていた。あまりにも多くのお金がかかり、シリーズに利益をもたらさなかった」
実際、当時はメルセデスのような強豪チームが数億ドル規模の開発費を投じ、圧倒的な支配を築こうとしていた。その結果、コスト抑制のために予算制限が導入されることになった。
ベッテルにとって2026年のルールは、その欠陥の上に築かれている危険性があり、コスト、安全性、そしてレースの興奮を損なうリスクがある。
「前のエンジン規則で生まれた革新的な技術を手放して、コスト削減を狙っている。新しいメーカーを引き込むためだ。電動化は全体的に良いことだし、モビリティの世界では必要だ。でも、効率で勝る100%電気自動車はすでに市販車で先を行っている」
一方、フォーミュラEのような電動レースでは、自動車メーカーの参入と撤退が激しいことも証明されている。FIAはすでにフォーミュラEを唯一の電動フォーミュラカテゴリーとする契約を延長している。
「新レギュレーションにはまだ納得していない。エネルギー回生は素晴らしいが、リアアクスルだけでフロントを無視するのは理にかなっていない」
また、ベッテルは持続可能燃料にも懸念を示した。
「カーボンニュートラル燃料は良いと思う。モータースポーツの外の世界でも必要だからだ。すでに走っている多くの車両や、船舶や航空機のためにも必要だ。ただ、その燃料の出どころには注意しなければならない。典型的なF1の開発競争を燃料に持ち込めば、2014年のように間違った方向へ行く可能性がある。燃料に関しては分子の出所を制限し、量産車生産にある程度つながるようにすべきだ」
2026年マシンは現在より軽量化されるが、それでもベッテルは「大海の一滴にすぎない」と指摘する。
「結局は『何を目指すのか?どうやって実現するのか?その資源はどこから来るのか?』ということなんだ。現行エンジンは高すぎる。ハイブリッドのステッカーは貼られているけど、複雑すぎて高価すぎるせいで量産車に技術移転されたものは何もない」
こうした事情から、F1技術の市販車への関連性が薄れ、スポーツはますます「エンターテインメント」に傾いていると彼は語る。
「技術移転から離れて、よりエンターテインメントへ向かうだろう。でも環境に対してはもっと良くしなければならない。僕が買う靴は、環境を害さず公正な労働条件で作られるべきだ。車やモータースポーツも同じだ。もしモータースポーツが消えてしまえば残念なことだ。ただ、変化すること自体は自然なことだ」
最後にベッテルはこう結論づけた。
「スポーツ的な視点では、F1の精神を損なわずに競争ができる限り接近することが重要だ。そしてファンがまだ手の届く価格で観戦できることも大切だ」
果たして2026年にその理想は実現するのか。F1の行方に疑問符を投げかける声はベッテルだけではない。本当の答えがわかるのは、新マシンがサーキットを走り出したときだ。