メルセデスのジョージ・ラッセルが「F1はターン1までがレースになっている」と発言した件が、メキシコGP木曜のパドックで話題になっている。先週のオースティンを「プロセッショナル(行列)だ」と評したラッセルの見立てに対し、複数のライバルが同意の姿勢を示した。

チームメイトのアンドレア・キミ・アントネッリが、乱流とタイヤ性状の両面から状況を説明した。

「クリーンエアとダーティエアでは感触がまるで違う…タイヤが頑丈になってスティントが伸び、劣化が減った」
「ペースが拮抗すると、前との差を作るのが本当に難しくなる。だから予選と1周目が極めて重要だ」
彼はシンガポールで「明らかに僕の方が速かったのに40周以上も前に留まらざるを得なかった」

体験を引き合いに、現行仕様の“追いにくさ”を具体例で示した。ハースのニコ・ヒュルケンベルグも、「ラッセルは一理ある」と明言する。

「トラックポジション依存が大きい。クリーンエアはキングだ」
「22年から年を追うごとに悪化し、今は静的なレースになりがちだ…結局“ターン1までの勝負”になる」

ウイリアムズのカルロス・サインツJr.も、22年当初は「後ろの方が有利な場面すらあった」と回想しつつ、今季は“頑丈なタイヤ×接近する車両性能”が重なって、タイヤ差による逆転契機が乏しくなったと語る。

「一発止まりの退屈なレースが増えた」
「ピレリやチームと連携し、常に“ワンストップのギリギリ”に保つ工夫を」
「必要ならDRSゾーン延長などの“微調整”も検討すべきだ。受け身ではなく先回りして変えるF1の姿勢が不可欠だ」

今年の接戦化は、速さの差を縮める効果と引き換えに、抜くための差を生む契機を削ってしまった格好だ。空力挙動、タイヤの作動ウィンドウ、DRS——どれも単独で解ける問題ではない。だがサインツの言う先手の微調整は、合理的な処方箋にみえる。議論の的は「レース中に順位が動く余地」をどう設計するかだ。