
米トランプ大統領は、すべての国に対して基本10%の関税を課すとともに、米国において貿易赤字が大きい国々に対してさらに高い関税を適用する、一連の広範囲な関税政策を発表した。トランプ大統領の狙いは、対中国政策や、アメリカ国内の自動車生産や雇用拡大にあるといわれるが、様々な企業が素材/部品の供給や研究開発に携わるF1チームに対しても大きな影響が生じることが予想される。
モータースポーツは技術革新と国際的な協力が不可欠な産業であり、F1は多くの国籍の企業が関与しているため、関税政策の影響は多岐に渡ると考えられる。そのなかでも短期的、直接的に大きな影響を被るのが、その拠点や物流を米国に依存するフォード、ハース、キャデラック(GM)となる。
フォード、ハース、キャデラック(GM)各チームは、アメリカと他国の国境を越えた素材・部品や機器等の調達や、チームのコスト構造に関税が影響を及ぼすため、今後予定外の追加コストが発生し、製造拠点や物流、予算計画の見直しを迫られる可能性が高い。
またF1は中国自動車メーカーの参戦を望んでいるとされているが、今回の関税政策によって、参戦の検討を推進できる企業は減ることだろう。
アメリカと中国の対立を中心に、貿易戦争の様相をみせるアメリカの関税政策だが、F1関係者がこれに異を唱える機会は無さそうだ。FIAは国際スポーツ規範に、ドライバーやチームメンバーを含むFIA管轄下の職員がいかなる政治的声明を発表することも全面的に禁止する条項を2022年に導入している。これは、ルイス・ハミルトンが「ブレオナ・テイラーを殺した警官を逮捕せよ」と書かれたTシャツを着用したり、2020年にグリッド全体でブラック・ライブズ・マター運動を強調する取り組みを行ったりといった注目を集めた出来事を受けて導入された。規定には「FIAの定款に基づきFIAが推進する中立性の一般原則に著しく違反する政治的、宗教的、個人的な発言やコメントの一般的な作成および表示」と明記されている。