
フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールは、F1が「予選チャンピオンシップ」と化す可能性を懸念している。
今年の日本グランプリは、日曜日の決勝レースにおいて実質的なオーバーテイクがほぼ見られなかった。現在のF1マシンは、「ダーティエア(1~2秒以内の前方を走るマシンの後方乱流)」に敏感であることが原因だといわれる。
そして日本GPの週末は、F1の常設サーキット史上初となる現象が起きた。トップ6がスターティンググリッドの順番通りにフィニッシュし、トップ10がそのままポイント圏内でフィニッシュした。11位以下で若干の順位変動はあったものの、フェルスタッペンやノリス、ピアストリの熱心なファンを除けば、退屈なレースだと感じたファンは大勢いただろう。
マシンは毎年速くなり、それにつれてサーキットは次第に狭く、短くなっていく。1987年、初の鈴鹿開催となった日本GPのポールポジションタイムは「1分40秒042」(ゲルハルト・ベルガー)だった。タイムは年々縮まり、2025年は「1分26秒983」(フェルスタッペン)となった。1分40秒台で走ることを想定した設計、特に直線の長さやブレーキングポイントは、明らかに現代F1のオーバーテイクに適していない。
バスールは決勝後の記者会見で語った。
「もちろん、予選が重要であることに変わりはない。しかし、マシン間の差が小さければ小さいほど、予選の重要性はさらに増す。なぜなら、ただ前方の1台と戦っているわけではなく、集団の中で競っているからだ。」
「だから、おそらく今後は『予選チャンピオンシップ』になる可能性がある。」
「今のマシンは非常に、非常にクリーンエアとダーティエアに敏感である。誰かの後ろを走ると、3~4秒離れていても、タイヤがより消耗し、走行の一貫性も失われていく。そして中国GPはその格好の例だった。」
ニコ・ヒュルケンベルグは、日本GPの感想を求められ、以下のコメントを残した。
「長くて退屈だった。前のマシンのリアウイングとDRSを見るのは、特に面白いとは思わなかった。こういったマシンでは、本当に大変だ。乱気流の影響は年々少しずつ悪化している。」
これを是正するには、クラシック・サーキットのストレート区間を大幅に延長するか、マシンの後方気流が変わるような技術規制の変更が必要だろう。
一方、フェルナンド・アロンソは、鈴鹿をモナコグランプリと比較しながら、こういった批判に対して現状を擁護した。
「ここは鈴鹿だ。過去に天候の変化がなければ、オーバーテイクが多かったレースはあまり記憶にない。
毎年、グランプリの木曜日になると、『鈴鹿は最高だ、モナコは最高だ、これは素晴らしい週末になりそうだ!』という話ばかりが聞こえてくる。」
「だけど月曜日になると皆が目を覚まし『ああ、(オーバーテイクの少ない)モナコは退屈だった。どうすればトラックを改良できるのか?鈴鹿は退屈だった』と言い出すんだ。」
「自分は否定的な面だけを見ようとは思わない。むしろこの体験を楽しもうとしている。今年もまた素晴らしい鈴鹿だったよ。これがF1だ。」