
FIAは2025年シーズンの開幕を前に、規則の「抜け道」を埋めるための修正を加えた。
フォーメーションラップへの参加を義務化
これまで、チームは特定の状況下でピットレーンスタートを戦略的に活用する方法を模索してきた。例えば、雨天時にはペナルティを受けたドライバーが、フォーメーションラップやセーフティカー先導の追加周回に参加せずに待機し、燃料やタイヤを節約することが可能だった。その上で、レーススタートと同時にインターミディエイトタイヤへと交換し、コース上のライバルたちがピットインする前にアドバンテージを得るといった手法が使われることもあった。
しかし、この戦略は2025年シーズンから封じられることとなった。新ルールでは全てのドライバーがフォーメーションラップ(追加周回を含む)に参加しなければならず、その後、ピットレーンへ戻ってレーススタートを迎えることが義務付けられる。これにより、意図的にスタート手順を回避することで得られていた利点は完全に排除されることとなる。
レースディレクターが危険なマシンの即時停止を命令可能に
FIAはさらに、クラッシュによってダメージを負ったマシンが危険な状態でピットへ戻ろうとする行為を制限するための規則改定にも踏み切った。
この変更が導入されるきっかけとなったのは、2024年カナダGPで発生したセルジオ・ペレスの事故である。ペレスはコントロールを失い、リアウイングを破損。しかし、その状態のままピットへ戻ろうと試みた結果、コース上に多数のデブリをばら撒く事態となった。この危険行為により、ペレスは次戦スペインGPで3グリッド降格のペナルティを受けている。
これを受け、FIAは規則26.10を改訂し、レースディレクターの判断で即座にマシンの走行を中止させる権限を付与した。「レースディレクターの独自裁量により、マシンが重大かつ明白な構造的損傷を負っていると判断された場合、ドライバーは安全な方法でマシンを停止しなければならない」と規定される。これは、従来のオレンジ&ブラックフラッグ(修復義務の警告)よりも迅速に適用される形となる。