FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、ベルギーGPを前にフランスAuto Hebdo紙に対し、2026年に導入予定の規則が最終調整段階にあることを明かした。

「我々は、AチームとBチームと呼ばれるようなチーム間の運用について明確にしようとしている。お互いに助け合ったり、連携したりするような関係に歯止めをかける措置を講じる予定だ」

この問題が再燃したのは昨年のシンガポールGPだった。レーシング・ブルズのダニエル・リカルドがファステストラップを記録し、マクラーレンのランド・ノリスから1ポイントを奪取。結果的にこの1点がマックス・フェルスタッペンのタイトル争いを有利にすることになった。これにマクラーレンCEOのザク・ブラウンが怒りを露わにした。

「AチームとBチームによる素晴らしい連携だ。あんなのが許されているとは知らなかったよ」

ブラウンの発言は、グループ内での協力行為に関する規則の曖昧さを鋭く指摘したものだった。

FIAが導入を目指す新たな規則は、すべての商業的・技術的なチーム間の関係を全面禁止するわけではないが、物理的・デジタル面での明確な分離を求める内容になる見込みだ。

「IT面では各チームのシステムを区別するための規則を設ける。加えて物理的な分離も求める。すでに多くの規定は存在しているが、今後はより厳格な条件を満たしてもらうことになる」

今回の改正は、フェラーリとハースのようなモデルを例とし、どこまでの協力関係が許容されるかを明文化しつつ、実際のレース結果に影響を与えるような連携を排除することが目的だという。

「たとえ商業的な関係があったとしても、それがレース結果を左右するようなことは避けなければならない。チームがそれぞれ異なる経済モデルを採用できるようにするのが狙いだ。たとえばハースのようにね」

ハースは、フェラーリからリスト外部品を購入しながらも独立コンストラクターとして活動しており、最近ではトヨタとの関係強化が進んでいる。日本ではトヨタの支援を受けた旧型マシンでのテスト(TPC)も行っており、FIAもこの動向を注視している。

「各チームが独自に戦える環境を整えるのが我々の狙いだ。こうした関係性を持たないチームが不利にならないよう、商業的なつながりを持つチームが不当に有利になることは許さない」

この「提携規制強化」は、レッドブルが内部の混乱を抱える中での動きでもある。長年チームを率いてきたクリスチャン・ホーナーが更迭され、ローレン・メキースが新たに体制を掌握。フェルスタッペンとマルコの派閥による影響力が、レッドブルとレーシング・ブルズの両チームにさらに及ぶようになったとも言われている。

このような連携に制限が課されれば、まさにレッドブルの多チーム戦略の核心を突くことになり、2026年の大幅な技術レギュレーション変更を前に、体制の安定化を図るレッドブルにとっては新たな課題となるだろう。