アブダビ最終戦、ポールポジションからスタートしたマックス・フェルスタッペンには、タイトルを争うランド・ノリスを「トラフィックに押し込む」選択の余地があった。ペースを抑え、後方のライバルを巻き込みながらマクラーレンのレースを崩す〜F1が何度も見てきた古典的なゲームだ。しかしフェルスタッペンは、そのカードを切らなかったことを幾つかのメディアが指摘している。
純粋な速さと戦略で勝負する道を選んだことは、スポーツマンとしての矜持の表明でもあった。フェルスタッペンは2025年シーズンを「タイトルは失ったが、キャリア最高の走りができた一年だった」と総括している。マシンの競争力不足や運に左右された悔しさを認めつつも、自らのパフォーマンスには確かな手応えがあったからこそ、駆け引きに頼る必要はないという判断に踏み切れたと言える。
「タイトルを逃した悔しさは当然ある。でも、僕自身のドライビングという点では、今季が一番充実していたと思う」
序盤の不運や戦略ミスで流れを失いかけながらも、終盤にかけてはポールポジションと勝利を積み上げ、最後は3連勝でノリスを追い詰めた一年だった。タイトルこそ逃したが、あらゆる状況下で速さと冷静さを示し、8勝した今季は、フェルスタッペンが王者の振いを体現したシーズンとして記憶されることになりそうだ。
