アブダビでシーズン最終戦を終えたルイス・ハミルトンが、「マトリックスから抜けたい」と語るほどのフラストレーションを露わにした。フェラーリ加入初年度は自身初の表彰台ゼロに終わり、選手権順位もキャリア最低の6位。最終戦も16番手スタートから8位にとどまり、新王者ランド・ノリスの戴冠を遠くから見届けるだけだった。
ハミルトンはレース後、この冬はF1から完全に離れ、「完全にマトリックスから抜ける」と徹底したオフを宣言した。写真撮影やメディア対応を含む日々の“F1マトリックス”から一度抜け出し、誰とも連絡を取らずに過ごすことで、疲弊した精神をリセットしなければ、40歳で迎えるキャリア後半戦を戦えないという危機感がにじむ。
一方でフェラーリが2025年仕様車の開発を早期に打ち切り、2026年の新レギュレーション用マシンにリソースを振り向けた判断については、自らも後押ししたと明かす。今季のマシンはマクラーレンやレッドブルに届かず、ハミルトンは24戦中19戦でシャルル・ルクレールに予選で後れを取り、決勝でも4位を超える結果を残せなかった。キャリア初のシーズン無表彰台という現実は、決して「運の悪さ」だけでは説明できない。
それでも彼は、フェラーリ内部には勝てるだけの人材がそろっていると強調する。シーズン中には首脳陣と会合を重ね、組織運営や意思決定プロセスの改善提案をまとめた資料も提示済みだ。今オフは「何が良くて何が悪かったのか、全てを洗い出す」と語るハミルトンが、名門再建の青写真をどこまで具現化できるか。フェラーリとの逆襲を期し、視線は早くも2026年へ向かっている。

