
F1が2026年シーズンに向けて、マシンおよびパワーユニットの刷新に突き進む中で、さまざまな課題が浮かび上がってきている。その中でも最近のF1委員会で議論を呼んだのが、エネルギーの使用方法とバッテリーのデプロイメントに関する問題であった。
レッドブルは、一部のサーキットのメインストレートにおいてリフト・アンド・コースト(加速を控えて燃費を稼ぐ運転)を強いられる可能性について懸念を表明した。それに対してメルセデスは、「全チームが同じ条件下にある」とした上で、テスト前から先走って結論を出すのではなく、シーズンを通じて様子を見るべきだという立場を示した。
また、サステナブル燃料のコストについては、両チームの意見は分かれた。レッドブルは運用コスト増加についてあまり問題視していないのに対し、メルセデスはコストが高くなる見込みであるとし、財政的に持続可能な方法を模索していることを明かした。
そして重量問題も議題に上がった。車体の最低重量は引き下げられている一方で、パワーユニットは依然として重く、両チームとも「これは全員が直面する共通の課題だ」と認識している。全体重量を下げる努力は続けられているが、それは想像以上に難しい作業となっている。
2026年のパワーユニットに関する見解
「来年のレギュレーションはすでに確定していて、各チームはその仕様に基づいてエンジンを設計・開発してきた。最大の懸念は新しいものではなく、2年前からすべてのPUメーカーによって指摘されてきた収穫量の問題だ。必然的に、シャシーデザイナーたちはレギュレーションの基準を上回るマシンを設計することになる。そしてその結果として、グランプリ中にリフト・アンド・コーストが増えるだろう。
2026年のレギュレーション下では、ストレートに入った瞬間にDRSが自動的に開く。つまり、追い越しのための手段がなくなる。FIAはこの点に再び注目していて、PUメーカーたちとも話し合いがなされている。
もし本当にこの問題がスポーツやレースの面白さにとってマイナスであるなら、それは再検討に値すると思う。これはエンジンの仕様や出力を変える話ではなく、特定のグランプリでのバッテリーの使い方を少し見直すだけかもしれない」
――クリスチャン・ホーナー(レッドブル代表)
「新しいレギュレーションが近づけば近づくほど、僕たちはチームの利益を最優先に行動するようになる。それは当然のことだ。僕たちが今の段階で言いたいのは、来年どうなるかまだ分からないということだ。バクーやモンツァで、エネルギーの回収がうまくいかずに“災害”のような状況になるかもしれない。そうならないことを願っている。
過去にも、予測に基づいて先に動いたことで、期待を大きく上回ったり、逆に下回ったりしたことがあった。だからこそ、今は推測で動くより、実際にテストしてから判断する方が賢明だと思う。クリスチャンも言っていたように、これはハードウェアを作り直す話ではない。ソフトウェアや調整幅の中で解決できる問題だ。
僕たちはこのスポーツが素晴らしいショーになることを望んでいる。もちろん勝ちたいけれど、同時に変化と予測不能性が必要であることも分かっている。
2014年以降の数年間は楽しかったけれど、長期的にはそれがスポーツにとって最良とは限らない。僕はメルセデスのために最善を尽くす必要があるが、それと同時にスポーツの未来にとって正しい解決策を見極めるバランスも大切だ。
FIAが提案したこのエンジンは、最初は誰からも歓迎されなかった。電動化50%というのは、当時の市販車の方向性に合わせたものだったし、アウディやポルシェのような新規参入メーカーを引きつけるためのものだった。だからこそ、今さら方針を変えるのは難しい。ホンダは再参入を決め、アウディも参戦を表明し、僕たちを含む各メーカーは、今はまだ“ゴールポスト”を動かしたくない。ただし、必要であれば柔軟な姿勢も忘れてはいけない」
――トト・ウォルフ(メルセデス代表)
サステナブル燃料のコスト問題
「あるPUメーカーからこの問題が持ち上がった。個人的には、僕たちにとってそれほど大きな問題ではない。新しいサステナブル燃料の開発には多額のコストがかかっている。だから今後は、ある程度の価格帯を設定しておくべきかもしれない。でも、燃料はパフォーマンスの大きな差別化要因になり得る部分だ。燃料メーカーたちはその開発に非常に熱心に取り組んでいる」
――クリスチャン・ホーナー
「僕の視点からすると、これが高コストになる理由は、サプライチェーン全体とエネルギー供給のすべてを“グリーン”にする必要があるからだ。そのためには、非常に特殊で高価な原材料を使う必要があり、それが予想以上にコストを押し上げている。
だからこそ、リッターあたりの価格を下げるために何か調整できる点がないか検討すべきだと思う。僕たちはオープンマインドで取り組んでいる。ペトロナスは僕たちの素晴らしいパートナーであり、彼らもこのプロジェクトに技術的に全力で取り組んでくれている。彼らと共に、財政的にもっと持続可能な形にするためのレギュレーション改正が可能かどうかを評価している」
――トト・ウォルフ
重量問題について
「車両重量に関して、最初に出された数値は、あまり根拠のない数字だった。現在のエンジンはかなり重く、それに対して車体重量は軽く設定されている。だから、目標重量を達成するのは全チームにとって非常に大きな挑戦になる。軽量化には莫大な費用がかかる。たとえばスチール製スキッドの導入が議論されていたが、それによって最低重量に5キロ追加する案も出ていた。でも、現時点ではどうしようもない。同じ条件での戦いだ。重量は“フリーのラップタイム”だから、チームごとに選択が必要になる。10キロ軽ければ、0.35秒速くなる。全チームが最低重量に達するのは、本当に難しい課題だ」
――クリスチャン・ホーナー
「クリスチャンが言っていたように、各チームは選択を迫られる。軽量化やバラストでどれだけラップタイムを稼ぐのか、あるいはどこで重さを削るのかを決めなければならない。軽量化のために他の性能要素を犠牲にするかもしれないし、その逆もある。
これは非常にチャレンジングな問題だ。とはいえ、僕たちがこの取り組みを行っているのは、マシンをより機敏にするためだ。それが重要だったのか? 僕はそうだと思っている。どこかでスタートを切らなければならない。最初の一歩は難しいが、全チームにとって条件は同じだ」
――トト・ウォルフ
