
レッドブルの角田裕毅が、セットアップの方向性を「マックス寄り」に振ったことで、マシン理解が一段深まったと語った。シンガポール後の連戦で迷いがちだった最適解の探索は、トップドライバーが築いた基準値に合わせて検証の手順を明確化し、挙動の“ブレ”を減らすことで前進した。
角田はリヤの安定感とブレーキング初期の姿勢づくりを最優先に、フロントの入り、縁石上の挙動、低速から中速へのつながりを順に詰めた。空力とメカの作業を同一フレームで回し、金曜のロングとショートを分担して再現性を確かめるアプローチだ。結果、タイヤの温度ウィンドウに入れるまでの時間と、そこからの摩耗の出方が読みやすくなった。
「僕たちは“まずは基準に寄せて、そこから外す”という考え方に戻した。チームとして同じ言語で話せるぶん、判断が速くなったんだ」
「僕とマシンの要求が一致しない箇所も残るけど、何を変えれば何が起きるかが見えるようになった。これが一番大きい」
この変化は、シミュレーターとの相関にも好影響を及ぼした。金曜の裏付けが土曜の一発につながり、決勝ではデグラの立ち上がりで無理をしない組み立てが可能になる。追い抜きが難しいコースではアンダーカット/オーバーカットの成立条件が広がり、戦略の自由度が増す。
もちろん、マックスの解に安易に“同化”するわけではない。求めるステア特性や路面適応には個性があるからだ。それでも、最速解に通じる“骨格”を共有しつつ自分の感覚を上書きしていく作業は、終盤戦のポイント争いを戦う上で確かな武器になるはずだ。次戦以降、角田の精度がさらに引き上げられるか注目だ。