アゼルバイジャンGP決勝で角田裕毅が見せたのは、攻めと抑制のバランスだった。終盤、前方のリアム・ローソンを猛追する局面で、角田は一瞬“ヒーロームーブ”な飛び込みを思い描いたというが、勝負所を見極めて踏みとどまった。

一瞬“ヒーロームーブ”を狙ったけれど、無理はしなかった。リスクとリターンを考えて、確実にポイントを持ち帰る判断をしたんだ。

このバトルはランド・ノリス、ルイス・ハミルトンも絡む緊密な隊列の中で起きたもので、角田はタイヤとブレーキのマネジメントを崩さずに押し引きを徹底。結果、今季自己最高の6位でフィニッシュした。

週末を総括するF1公式サイトなどでも、角田のレース運びは高評価を受けている。スタートでの落ち着き、序盤にノリスを抑え込んだ対応、そして大きなミスなく走り切った集中力が指摘されている。直線の強みやドラッグの使い方を活かしつつも、無理筋の仕掛けは避け、確実に順位を固めた点が光った。

スタートを決めて、やるべきことをやり切れた。週末を通して積み上げた感触が、ようやく結果に結びついた気がする。

来季のシートが危ぶまれる中、極大のプレッシャー下で、角田は予選とレース運びで存在感を示した。ポイントを積むことがチーム全体の推進力になる今、冷静な判断で拾った6位は価値が高い。シーズン終盤に向けて、確度の高いレース運びは、次の一歩を確実にする武器になるはずだ。6位くらいのポジションで走り続けていれば大きなチャンスは巡ってくる。攻めと守りの天秤を見極められる角田の成熟は、チーム全体の戦い方にも好影響を与えるだろう。