欧州委員会が正式に European Commission(以下「委員会」)による反トラスト調査を、オーストリアに本拠を置くエナジードリンク大手 Red Bull GmbH に対して開始した。調査対象は、EU競争ルール違反のおそれがある「競争の不正抑制」行為となる。
この調査は、同社のF1やMotoGPといったモータースポーツ活動とは直接の関係をもたないが、エナジードリンク部門において、同社が欧州経済領域(EEA)全域に及ぶ戦略を展開し、競合製品の取扱いや流通を制限していた疑いが浮上している点が焦点となっている。
特に関心が寄せられているのは、容量が250 mlを超えるボトルまたは缶を販売する競合ブランドを対象に、スーパーマーケットやガソリンスタンド併設店舗といったオフ‐トレード流通チャネルにおいて、次のような行為を行っていた可能性であるという。
1.同社が顧客(小売業者)に対し、金銭的または非金銭的なインセンティブを付与し、その顧客が競合の「250 ml超サイズ」のエナジードリンクを取り扱わないか、競合製品の陳列・販促を不利に扱うよう(デリスト)働きかけていた疑い。
2.さらに、同社がその顧客におけるカテゴリ・マネージャーの立場を悪用し、競合製品(250 mlを超えるサイズ)をデリストあるいは不利な扱いとするよう仕向けていた疑いがある。カテゴリ・マネージャーとは、複数企業の商品を含むカテゴリ全体を管理し、小売店でのマーケティングやプロモーション、仕入れ選定を行う立場である。こうした立場を悪用し、レッドブルを優先し、競合を抑制していた可能性がある。
委員会は、オランダにおいて同社が支配的な地位を有しているとみており、特にこの市場での動向に強い関心を寄せている。なお、同社がF1世界王者 マックス・フェルスタッペン と結びつき、近年自らのレーシング部門である Red Bull Racing がコンストラクターズ/ドライバーズタイトルを獲得してきた点も、ドミナントな市場地位獲得の背景として注目されている。
委員会のクリーン・公正・競争的移行を担当する副会長、 テレーザ・リベラ 氏は声明を発した。
「本日、当社があらゆる競合製品から自社のよく知られたエナジードリンクを保護する計画を有していたかどうかについて、競争ルール違反かどうかを巡る調査を開始する」
「我々は、これらの行為が価格を高止まりさせ、消費者のエナジードリンクの選択肢を限っているかどうかを確認したい。これは食品供給連鎖における競争ルールの執行を通じ、ヨーロッパの消費者に利益をもたらす取り組みの一環である」
委員会は2023年3月にレッドブル本社及び子会社に対し抜き打ち立ち入り調査を実施。その後も追加調査を継続してきた。レッドブルは、これら立ち入り検査を認めた決定に対し、欧州連合一般裁判所に異議を申し立てたが、同裁判所は調査継続の差し止め申請を却下。さらに2025年10月にも、同裁判所がレッドブルの検査決定への異議を退け、「十分な根拠に基づき採択されたものであり、恣意的でも過大でもない」とした判断を下した。

