角田裕毅、ダニエル・リカルド、リアム・ローソン
レーシング・ブルズにとって、2024年のF1シーズンは前評判とは正反対の、混乱の年となった。VISAを擁した大規模なリブランド、シーズン中のドライバー交代、そして期待を下回る成績と、多くの関係者の人生を左右する、複雑な感情が入り混じった一年だった。
2024年のF1シーズンを迎え、レーシング・ブルズ(かつてのアルファタウリ、現在は再び改名してレーシング・ブルズ)が高い期待を持って参戦した。イタリア、ファエンツァに拠点を置くチームは、レッドブルとの関係をより密接にすることを発表した。さらに、新たなチーム代表として元フェラーリのレースディレクターであるロラン・メキースを迎え、大きな飛躍が期待されていた。
また、角田裕毅とコンビを組むダニエル・リカルドに対しては、事実上の最後通告が出されていた。リカルドが好成績を収めれば、セルジオ・ペレスの後任としてレッドブルに昇格する可能性が高いと見られていた。しかし結果は正反対となり、リカルドのハイライトは、マイアミのスプリントレースで4位に入ったこと以外は語るべきことがなかった。18戦中わずか3回しかトップ10に入れず、多くの関係者とファンに愛されるドライバーにも関わらず、残り6戦を前にリアム・ローソンに交代させられた。
シーズン中のマシンアップデートも、熾烈な中団グループ争いのなかで目立った結果はほとんど得られなかった。昨年や今季序盤でテールを追っていたマクラーレンはトップチームに返り咲き、格下に見えていたハースやアルピーヌにはシーズン中に追い越され、終盤には今季ゼロポイントで低迷していたザウバーにも追いつかれたように見えた。
角田裕毅はしばしば一人でチームの戦いを支え、浮き沈みのあるマシンを駆って何度もQ3に食い込み、オーストラリアGPからモナコGPまでの6戦中5戦でポイントを獲得するなど、上出来といえるレースを幾つも並べてみせた。チームメイトに対しては、リカルドを予選で12勝6敗と上回り、レースでも9勝8敗とリードした。その後登場したローソンとの戦いも角田が予選で6勝0敗、レースでも4勝2敗と圧倒した。リカルドとローソンのポイント合計は16であったのに対し、角田は30ポイントを獲得した。チームがコンストラクターズランキング8位に終わった理由は、アルピーヌやハースが成し遂げたような、二人のドライバーで得点を記録するレースが一度もなかったからだ。
2025年、不穏な空気を払拭できるか
2025年は、チーム内に不穏な空気が漂うことは避けられないだろう。リカルドやローソンよりも速かったにもかかわらず、角田は再びレッドブルへの昇格を見送られた。納得のいかない結果を突き付けられ複雑な思いを抱えていることは間違いない。当然チームもそれを承知している。2025年は、角田にとってレーシング・ブルズでの5年目となる。デビューから同チーム5年は、F1では比較的豊富な経験となる一方で、表彰台未経験の状態をいつ脱することができるのかというプレッシャーとも対峙することになる。レッドブルの代表クリスチャン・ホーナーは、5年経過した角田の放出を検討せざるを得ない可能性を認めている(因みにピエール・ガスリーは途中参戦した2017年、レッドブルから戻された2019年を含めるとトロロッソ~アルファタウリに6年間在籍している)。
唯一、角田が2025年にできることは、ルーキーのハジャールに圧倒的な差をつけること、そしてレッドブルに乗るローソンに挑むことで、レッドブルや他のチームに改めて自分の速さを注目させることだ。もちろん、チームは中団グループで勝てるマシンを用意する必要がある。数年後もF1でシートを確保し続けて上位争いに加わるには、決勝レースで上位に食い込む力と結果を見せる必要がある。