レッドブルで2015〜2025年にかけてメカニックを務めたカラム・ニコラスが、ピット作業とテスト現場の“見えにくい危険”を語った。彼は計測用「エアロレイク(空力計測フレーム)」の取り扱いで何度も負傷し、いまも傷痕が残ると明かしている。現在はチームアンバサダーに転じている。
エアロレイクは走行中の気圧分布を測るセンサー群で、鋭い金属フレームと多数の配線がむき出しだ。ニコラスは「皮膚に刺さるトゲの塊みたいで、本当に厄介だ」と表現し、指や肘、首を引っかけて出血した経験を複数回述懐。「血が出ていても、まず機材を壊していないかの方が心配になる」とも語った。通常は走行初期の数本に装着されるため時間との闘いが増し、リスクは高まるという。
ニコラスは今季、SNS上で「ピットクルーは3秒働くだけ」と揶揄する声に反論し、F1テクニシャンの平均年収は約6万ポンド(約1,216万円)、週の労働時間はおよそ70時間、多くがエコノミーで移動する現実を説明していた。華やかな超高速ピットストップの裏側に、長時間労働と安全上の負担があることを示した。
