シンガポールGP金曜フリー走行2回目(現地10月3日)終盤、ピットレーンにおいてランド・ノリスとシャルル・ルクレールが接触するアクシデントも発生した。ノリスはピットウォールにヒットしてフロントウイングを交換したが、チームは迅速に修復し周回を再開している。

この接触についてFIAはセッション後に審議を行い、ドライバーへのペナルティは科さない一方で、フェラーリに対してアンセーフ・リリースに相当する手順上の不備があったとして罰金を科した。各メディアの報道によれば、罰金額は1万ユーロ(約160万円)で、ピット作業の合図や送り出しの判断に問題があったとされる。

近年のF1では、特に予選で「いつピットを出て、隊列のどこに位置取るか」という見えない戦いが激化している。アウトラップの速度制限(最大デルタ)導入以降、勝負の重心がピットレーンの隊列取りへと移った。コースに入るタイミング、ライバル達の動き、タイヤ温度管理――こうした駆け引きが各チームの作戦の核心になっている。

ピットレーンの位置取りは数秒の判断ミスが命取りになり、トラフィックに陥れば、限られた周回プランが無駄になり、タイヤ温度を失うリスクがある。結果として、予選ともなれば各チームはメカニックの偵察やガレージ発進のフェイントまで織り込む心理戦を展開しているという。今回の接触事故が示す通り、その副作用が今回のシンガポールでも噴出した格好だ。