メキシコGP後、裁定の公平性をめぐる不満が相次いだ。メルセデスのジョージ・ラッセルは、スタート直後に複数台が2コーナーを大きくショートカットして、ほぼそのままのポジションでコースに戻ったにもかかわらず処分が出なかった点を強く批判した。ラッセルは

「マックスは芝生の上を完全に突っ込んでいった」

と表現し、スタートでカットしたことが実質的なポジション獲得につながったのに見逃されたと訴えた。明確な一貫性を求める声だ。

一方、フェラーリのルイス・ハミルトンは、マックス・フェルスタッペンとの攻防でコース外走行後に「持続的なアドバンテージ」を得たとして10秒加算の裁定を受け、8位でフィニッシュした。この判定についてハミルトンは

「10秒ペナルティを受けたのは僕だけだった。ちょっとクレイジーだ」

と不満を表明した。スチュワードの判断基準は、主に「コース外走行による持続的利益」の有無だ。今回のケースでは、ターン1~4の一連の攻防で、ハミルトンがコース外から前に出た状態で戻り、十分にポジションを戻さなかった点が問題視された。一方で、同区間の他の場面(ターン1側の押し出しや相手のオフトラック)については、状況解釈の違いから不問となっている。

今回の一連の騒動は、ここ数戦でドライバーたちが指摘してきた「スタート一発で勝負が決まりやすい」「裁定が不透明に見える」という不満とも地続きだ。ラッセルは以前からF1のバトル環境が“ターン1までのレース”になりがちだと述べており、メキシコでもその問題が露呈した格好だ。競技側がスタート時のコースカット取り締まりと、コース外復帰時のポジション返上の基準をより明確に運用できるかが、今後も論点になる。