F1主催によるラスベガスGPが近づく中、地元のビジネスオーナーたちから大会運営やF1そのものに対する厳しい声が上がっている。複数の経営者がメディアに対し、F1がもたらす混乱や収益への影響について率直に語った。


地元住民やネバダ州からの支持の欠如

レッドブルのチームアドバイザー、ヘルムート・マルコ氏は、ラスベガスGPに否定的な意見を示している。同氏はオーストリア紙「Österreich」に対し、「地元住民からの支持はほとんどない」とコメントした。

また、F1関係者がネバダ州に入国する際に問題が生じたという報告も相次いでいる。レッドブルの角田裕毅は、「入国審査で2~3時間も足止めされ、帰国を迫られそうになった」と述べた。彼はパスポートやビザが有効であるにもかかわらず、直前にアメリカ・オースティンでのレースに参加したばかりであると主張した。


ガソリンスタンドオーナーの苦境

ラスベガスでコカ・コーラのペイントが施されたガソリンスタンドを経営するウェイド・ボーン氏は、ラスベガスがF1カレンダーに加わった際には喜んでいたという。しかし、結果的には、2022年11月の売上が68万2000ドルだったのに対し、今年は20万ドルにも届かない見込みだと語った。

「胃が痛む思いだ」とボーン氏は述べる。「もしこのレースが契約の4年目まで続くなら、私は店を畳むしかない。従業員の50%を解雇せざるを得なかった。」

「年に1回、90分間のレースのために、これほどの破壊がもたらされるなんて説明がつかない。我々の街だというのに。」


レストランオーナーの訴訟と不満

イタリアンレストラン「バティスタズ・ホール・イン・ザ・ウォール」を経営するランディ・マーキン氏は、F1がもたらす混乱による経済的損失を理由に訴訟を起こしている。

「F1ほどこの街を破壊したイベントは他にない」とマーキン氏は語った。同氏によると、F1開催時には予約が50%も減少するという。

「普段なら予約が埋まる時期なのに、交通規制や道路閉鎖のせいでキャンセルの連絡ばかりだ。かつてはストリップ通り外で一番忙しいレストランだったのに、今では近隣のレストランがレースウィーク全体を休業するほどの状況だ。」

マーキン氏はF1の姿勢についても批判的だ。「F1関係者は地元を全く気にしていない。これまで多くの企業がラスベガスに進出してきたが、F1ほど街の一部になろうとしない企業は初めてだ。」


F1運営への不信感

F1は2023年大会後、混乱を招いたことを謝罪し、2024年に向けて改善を約束している。しかし、マーキン氏は「何も変わっていない」と述べる。

「F1が本当にラスベガスを大切に思うなら、法廷で争う必要はなかったはずだ。彼らと話し合うことは不可能だ。彼らには忠誠心がない。」

さらに、「F1の『お金さえあれば何でもできる』という考え方は、もはや通用しない。特にラスベガスという市場では。」と締めくくった。