
多くの話題とドラマに包まれたイギリスGPでメルセデスは存在感を示せなかった。W16の弱点がシルバーストンで改めて露呈し、2戦連続で導入されたアップデートがマシンのパフォーマンスを向上させることはなかった。例年、シーズン中盤の開発力に定評のあるメルセデスだが、2025年型マシンにはムラが見られる状況だ。
F1においてメルセデスのドライバーラインアップは、安定性の象徴とされてきた。ブラックリーのチームは基本的にドライバーを頻繁に入れ替えることはないが、マックス・フェルスタッペンとトト・ヴォルフの交渉は大きな注目を集めている。
この契約騒動の陰で、W16の近況は徐々に脇に追いやられてきた。カナダGPでの勝利は鮮烈だったが、その後のオーストリアとイギリスでは再び守勢に回る展開となった。
オーストリアでの不振はある程度予想されていた。シュピールベルクは歴史的にメルセデスにとって苦手なサーキットだからだ。だが、シルバーストンは本来W16の特性に合致するはずのコースだった。それにもかかわらず、ジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリの両名がペース不足に苦しんだことは、チームにとって大きな警鐘となった。チーム代表のブラッドリー・ロードは次のように語った。
「まず第一に、我々はもっと良いスタート地点に立ち、マシンの持つ本来のパフォーマンスをきちんと示したいと考えている。そのうえで、アップデートが控えている。シルバーストンの週末については、理解すべき点がいくつかある。特にキミに関してはマシンのバランスに制限があり、高速コーナーでどこまで思い切って攻められるかという問題があった。今のマシンのセットアップでは、思い通りに走るのが難しかった」
「だから、データを洗い出して、スパに持ち込むマシンの仕様をどうするか決定する必要がある。そして、スパとハンガリーの両方で性能向上のためのアップグレードがある。そこで前進のチャンスをつかみたい」
今季のタイトル争いは現実的な目標ではなくなったが、それでもチームはフェラーリやレッドブルに対しては前に出る姿勢を崩していない。そして、それが最終的に2026年にフェルスタッペンがチームを離れる決断を後押しする可能性もある。もしレッドブルが“勝てるマシン”を用意できなかった場合は特にだ。
