メキシコGPの表彰式で、ランディング・ノリスにブーイングが浴びせられた。圧巻の独走で優勝し、ドライバーズ首位を奪い返した直後だったが、スタジアムセクションの観客の一部が不満をあらわにした。インタビュアーのジェームズ・ヒンチクリフの前でノリスが話し始めると、大きなブーイングが響き、一瞬言葉を切る場面もあった。
なぜノリスは標的になったのか。現地での明確な理由は定かでないが、SNS上でくすぶる「マクラーレンのピアストリ冷遇」論や、フェラーリやフェルスタッペンの人気の高さが影響した可能性が指摘されている。さらに、9月のイタリアGPでのチームオーダー騒動を引きずる空気も、反感の土壌をつくったとみられる。
当のノリスは冷静だった。インタビューで一呼吸おいてから、こう言い切った。
「一戦一戦に集中するだけだ。僕は自分に集中し、頭を下げてやるべきことをやる。他は無視する。それが今はうまくいっている。僕はハッピーだ。」
レース後のスタンドでも再び野次が飛んだが、ノリスは動じず、優勝ボトルに“Viva Mexico”とサインして観客に応えたという。
圧勝という事実と、渦巻く感情。メキシコのヒーロー、ペレスの帰還を望む声と、王者候補への反発が交錯するスタジアムの空気は、選手権争いの緊張を映す鏡でもあった。
