ランド・ノリスとオスカー・ピアストリは、他チームを圧倒するタイヤマネジメント力とともに、フレキシブルウイングの噂なども飛び交う中で、今なおレースを支配し続けている。

パドック内では依然として“語られているが確認できない秘密”が数多く存在すると、独Auto Motor und Sportの記者ミハエル・シュミットが報じた。

中でも不可解なのは、フリー走行3回目でマクラーレンが毎回のように限界を攻め、他チームを驚かせるタイムを記録する理由だという。

「なぜマクラーレンのメカニックたちは、ブレーキダクトを調整する際にクルマの前に並んで作業を隠すのか。そして、なぜグリッド上でマクラーレンだけがいつもリヤタイヤを装着せずにグリッドに並ぶのか」

シュミットはそう指摘し、リヤタイヤが常にギリギリまで装着されないことも注目点だと述べた。

そして、ついにその“謎のひとつ”が浮かび上がった。

マシンのフロントノーズ全体を取り外さないと見えない場所に、金色のタンクが取り付けられているのが撮影されたという。このタンクにはドライアイスが収納され、コクピット冷却と関係していると見られている。

シュミットはこう説明する。

「フロントウイング、フロントアクスルのジオメトリー、ウィッシュボーン、そしてベンチュリダクトの組み合わせにより、ダウンフォースの中心がちょうどドライバーの位置に集中するようになっている」

このため、マクラーレンにはコクピット専用の冷却システムが搭載されている。特殊な冷却液が専用の配管を通じて循環しており、アンダーボディのエッジやサイドポッド、リヤブレーキダクトも空気の渦流を発生させて、ディフューザーとリヤタイヤの間の隙間を密閉するように設計されている。

この冷却技術が、2025年シーズンにおいて他のメルセデス製パワーユニット搭載チームが抱える信頼性問題から、マクラーレンだけが無縁である理由かもしれない。

シュミットはこう続ける。

「クルマ全体の冷却性能が向上したことで、従来必要だった空気抵抗の大きい排気用スリットが不要になった。車体全体が放射する熱が減ったことも、タイヤにとっては有利に働いている。フロントとリヤのブレーキドラム間に設けられた空気ダクトも、ある地点からリムの内側へ熱が届かないように設計されている」

さらに、マクラーレンが熱遮断材として相変化金属を使用しているかどうかについては不明であり、同チームからの情報は無い。