フェラーリは2026年のF1プログラムに大きな打撃を受けた。長年エンジン部門を率いてきたベテランのヴォルフ・ツィマーマンと、その副責任者ラース・シュミットがマラネロを離れ、マッティア・ビノットの下でアウディに合流することになったと報道されている。

ツィマーマンは2014年、当時チーム代表だったビノットの要請でメルセデスからフェラーリに移籍し、ハイブリッド時代のエンジン部門を支えてきた。彼はパワーユニットを設計し、2026年の大規模な新レギュレーションに向けた次世代エンジン開発を主導していた人物だという。

イタリア紙のコリエーレ・デッラ・セラ紙は、彼を「ロックスターのような長髪を持つ天才」と評し、今回のシュミットとの同時離脱がスクーデリアにとって微妙な時期に起きたことを強調した。

記者ダニエレ・スパリッシは「新レギュレーション施行を数か月後に控え、グアルティエリが率いる部門にとって極めて繊細な時期だ」と指摘している。

また「ラ・レプッブリカ」紙は、ツィマーマンを「フェラーリエンジンの父」と呼び、彼とシュミットが揃って、来季ザウバーに代わりグリッド入りするビノット率いるアウディの新ワークスチームに参加すると報じた。アウディは完全にドイツ製の新パワーユニットを投入する予定だ。

フェラーリは今回の退任について「友好的な分離であり、通常の人材交代の一環だ」と強調。アルピーヌやメルセデスから新たな人材を迎え入れ、グアルティエリを支えていくとしている。

しかし、ライバルが次々と2026年プロジェクトを前進させる中で、この出来事は厳しい印象を与える。噂では、メルセデスがすでに新たな「50-50ハイブリッド」フォーミュラにおいて優位に立っているとも囁かれているが、確証はない。

ベテラン記者のレオ・トゥリーニは「今回の退任劇は不都合な疑問を投げかける」と記した。

「この別離は二つの解釈が可能だ。2026年のフェラーリエンジンに失望があるのか、それともビノットが単に彼らを説得してアウディに引き入れたのか。勝てば勝利を呼ぶが、負ければ噂が溢れ出す」

チーム代表フレデリック・ヴァスールは「これはF1における技術スタッフの自然な流動の一部だ」として事態を沈静化しようと努めている。しかしタイミングは疑わしい。報道によれば、フェラーリはまだ2026年型パワーユニットを完全な形でベンチテストしておらず、FIAによるホモロゲーション期限まで残された時間はわずか3か月だという。

一方で、アウディは新たにアディダスとの提携を発表。2026年からアウディとメルセデス両チームにウェア供給とスポンサーを行うことも明らかにされた。