2024年シーズンは、F1史上最も多い24戦が開催されたことにより、ピレリにとっても記録的なタイヤ生産量を達成したシーズンであった。ピレリは各チームが実際に使用したタイヤの種類や走行距離、さらにはシーズンを通して記録された温度データなどを発表した。ここでは、そうした興味深い数字の数々を紹介する。
走行距離とタイヤの使用状況:スリック、インター、フルウェットのバランス
※C1が最も硬い
2024年に各チームが使用したタイヤは合計で「5,298セット」であり、その走行距離は「334,942.175km」に達した。これは前年に比べて27,016kmも増加している。この増加分は、昨年は行われなかったイモラと上海でのレース開催が影響している。
今シーズン、ピレリは合計8,016セットのタイヤを供給したが、そのうち2,718セットは一度も使用されなかったという。これを踏まえ、ピレリは“ストリップ・アンド・フィット”という工程を活用し、装着はされたが未使用に終わったタイヤを再利用できる仕組みを導入している。これにより約3,500本の追加生産を回避できた。
使用されずに終わったスリックタイヤは935セット(全体の11.66%)であり、最大でも3周しか走っていないものも948セット(11.82%)あった。将来的には、この未使用タイヤを減らし、より効率的な運用を目指すためのレギュレーション変更がすでに議論されている。
各コンパウンドの使用率:C3が首位
今季ピレリは、昨年導入していたC0を廃止し、C1からC5の5種類をレースに投入した(来季にC6を導入する可能性も検討中とされる)。中間グレードであるC3は依然として最も多くの走行距離を記録し、全体の32.06%を占めた。ただし、昨年より約4ポイントほど減少傾向にある。
最長スティント:C3:300.15km(ガスリー)、C5:141.82km(角田裕毅)、インター:191.884km(角田裕毅)
同一セットのタイヤで最も長いスティントを記録したのは、アゼルバイジャンGPでのピエール・ガスリー(アルピーヌ)だ。彼はC3(その週末の最も硬いコンパウンド)で50周=300.15kmを走破した。
その他の記録としては、C2ではシャルル・ルクレール(フェラーリ)のサウジアラビアGP・43周が最長。C4はジョージ・ラッセル(メルセデス)がモナコGPで77周(256.949km)を刻んだ。最も硬いC1ではニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)がザントフォールトで57周(242.763km)を走り抜いている。最も柔らかいC5に関しては、角田裕毅(レーシング・ブルズ)がシンガポールGPで141.820kmを走行し、こちらの最長記録を樹立した。
ウェットタイヤに関しては、角田裕毅がカナダGP(モントリオール)でインターを191.844km走行し、リアム・ローソン(レーシング・ブルズ)がフルウェットで81.871kmを走破したのがハイライトだ。
サーキットの気温:最も暑かったのはハンガリーとイモラ、最も寒かったのはシルバーストンとラスベガス
気温データに目を向けると、決勝日の気温が最も高かったのはインテルラゴスの「35.6℃」だった。一方で最も低かったのはシルバーストンの「13.9℃」だ。路面温度に関しては、フリー走行が行われた金曜日のハンガロリンクが「58.6℃」という最高値を叩き出し、決勝ではイモラが「52.5℃」とトップを記録した。逆に最低路面温度は、同じくシルバーストンの「12.8℃」であり、決勝に限るとラスベガスの「16.8℃」が最低となった。時期的要因とナイトレースであることが影響したようだ。
ピットストップ:鈴鹿が最多、モナコが最少
ピレリによれば、今季最もピットストップが多かったのは鈴鹿でのレースで、合計46回を数えた。各チームの戦略はさまざまで、多くが2回のストップを選択した一方で、3回行ったチームもいれば、シャルル・ルクレールのように1回だけのストップで済ませた例もあった。
逆に最も少なかったのはモナコGPの決勝だ。スタートで混乱が起きた直後に赤旗が掲示され、全車が“無料”のタイヤ交換を行えたことで、その後のピット作業が一気に減少した。結果として、決勝全体で合計7回しかピットストップがなかった。