
夏休み直前、フェラーリはフレデリック・ヴァスールをF1チーム代表として複数年契約で留任させることを正式発表した。もともと彼の立場が脅かされていたわけではないが、平均的な成績に終わったシーズンを受け、憶測や噂が広まり、1年で交代の可能性があるとの見方も出ていた。
ルクレールもハミルトンも、ヴァスールが外されるとは考えていなかったが、「F1では何が起こるかわからない」という声は最終的な発表まで止むことはなかった。この噂が勢いを増した背景には、長年レッドブルのチーム代表を務めたクリスチャン・ホーナーが突然辞任したことがある。
しかし今、フェラーリでは全てが落ち着き、ルクレールもハミルトンもこの決定を歓迎している。ルクレールは、ヴァスールの下でチーム運営の変化をはっきりと感じている。過去の上司を過小評価するつもりはないが、彼はチーム文化の変化が確実にプラスになったと語る。
最大の違いの一つはピットストップと戦略だ。以前は迷いが多かったが、今は格段に改善された。ヴァスールの存在は、ルクレールとハミルトンの両者にとってフェラーリに残り続ける動機にもなっている。
トップの安定は歓迎すべきことであり、彼の陽気な人柄も同様だ。ハミルトンは、トト・ヴォルフとの絶対的な違いがありながらも共通点を見出している。メルセデス時代、ヴォルフが自分とチームから最大限の力を引き出したように、ヴァスールにも同じ資質があると感じている。
ヴァスールの影響と文化の変化
「過去の時代と比較するつもりはないけど、フレッドには素晴らしいビジョンがある。フェラーリの中で難しいのは、日々の仕事に感情が非常に大きく関わってくることだ。イタリア人は情熱的で、それがフェラーリを特別な存在にしている。ただ、フレッドは感情を脇に置き、周囲の雑音に左右されずにチームの現状を正確に見極めることができる。これはとても重要なことだ。それ以外にも彼には多くの資質がある。
その一つは、工場の全員から最大限の力を引き出すことだ。すべてを合わせると大きな違いになる。フレッドはさまざまな仕事の進め方を変えたけど、最大の違いは彼の全体的なビジョンだと思う。そのビジョンをチーム全体に根付かせたことがとても大きい。フェラーリの魅力は、感情が常に強く関わることだが、それは時に厳しい状況で足かせにもなる。フレッドはそういう時でも常に冷静で、チームをより明晰な状態に保ってくれる。これが彼がチームにもたらした最も大きなことだ」
(ルクレール)
トップの安定
「僕が決定権を持っているわけじゃないけど、安定は常にとても重要だと思う。フレッドは僕たちが頼る存在であり、チームを率いる人物だ。彼がこれからも何年もいてくれるのは間違いなく良いことだ。F1では成功するチームを作るには時間がかかるからね。これからもフレッドと一緒にやっていけるのは、未来に希望を持てる理由になる」
(ルクレール)
マシンへの確信
「もちろんフレッドもその一部だけど、一番大きいのはチームの働き方を見ていることだ。僕たちは正しい方向に進んでいると確信している。来年は新しいマシンの時代になるから、大きな転換点だ。新時代の最初で躓くと、他のチームもアップグレードを続ける中で差を埋めるのは難しい。だから最初から正しいスタートを切ることが必要だ。それから先はどうなるか見ていこう。今はフェラーリを再び偉大なチームにして、レースに勝つために全力を尽くすだけだ」
(ルクレール)
ハミルトン加入でヴァスールの立場に憶測が出た件
「間違いなくあった。年初にチームが大きく注目されたことで、状況は悪化したと思う。開幕当初はみんなが僕たちがチャンピオンを獲ると考えていて、残念ながらそうはならなかった。すると噂が出て、それが必要以上に広がってしまった。これは僕たちがコントロールできることじゃない。前にも言ったように、これがフェラーリというチームの宿命だし、それは変わらない。僕たちにできる最善は、そういうことをできるだけ考えないようにすることだ」
(ルクレール)
ヴァスールの陽気な人柄
「彼は本当に面白い人だと思う。それがチームに良い影響を与えているのは間違いない。チームの中には面白い人がたくさんいるけど、僕たちは仕事のためにここにいる。ただ、チームディナーではいつも楽しく過ごせるし、本当に家族のような雰囲気だ。僕自身、フェラーリで育ってきた感覚があるし、今もその一員だ。フレッドはチームにとてもよく溶け込み、ユーモアを交えてチームを率いてくれている。それが時には難しい状況を和らげてくれる。本当に彼の再任が嬉しい」
(ルクレール)
ヴォルフとの違いと、同様にパフォーマンスを引き出せるか
「いや、全く違うよ。完全に違う。ただ、レースにかける思いという点では共通していて、2人とも大のレーサーだ。僕がトトと仕事をしていてとても良かったのは、人の力を最大限に引き出す方法を知っていることだった。例えば僕の場合、自由に自分を表現できる環境を作ってくれて、それが僕を最高の状態にしてくれた。フレッドもその点ではとても似ていると思う。今はまだ彼のやり方を学んでいる段階だけど、彼を信頼しているし、その気持ちはずっと変わらない」
(ハミルトン)