
フェラーリでのルイス・ハミルトンの新たな挑戦は、希望と困難が入り混じるものとなっている。ここまでいくつかの好結果も挙げてはいるが、マシンへの順応やチームとの連携構築にまだ時間を要している。
「僕は大丈夫だよ。でも、皆が見えていない舞台裏ではいろんなことが起きているんだ。改善が必要なことが山ほどある。変えなきゃいけないこともたくさんある。今年は勝ち争いができる状態じゃないことは、僕自身もよく分かっている」
「チャンピオン争いに加わっていないのは、正直いい気分じゃない。でも、今はチームとの関係を築いている段階で、僕が変化を導く役割を担っている。来年に向けて、勝てるクルマを作って、継続的に戦える体制を整えるための準備をしている。その意味では、今の状況にも納得はしているよ」
「でも、もちろん勝ちたいんだ。前で争っていないと、やっぱり悔しい。カナダでは表彰台争いができると期待していたけど、今の僕らにはそのパフォーマンスがない。だから、今後のアップグレードで少しでも戦えるようになればいいと思ってる」
一方で、カナダGPを前にフェラーリチームには厳しい報道が続いた。フレデリック・ヴァスール代表がプレッシャーに晒されているとの憶測、そしてシャルル・ルクレールの移籍話まで浮上したが、週末を通じてこれらは否定された。記者会見では、ヴァスールが怒りを露わにする場面もあった。
週末後、ヴァスールは改めて報道への不満を語った。こうした移籍や解任の噂がチーム全体に与える悪影響は大きく、責任ある立場として否定せざるを得ないという。
「もっと怒ってもいいんだけどね。この話はもう終わりにしたい。これ以上火に油を注ぎたくないんだ。私がフェラーリにサインしたとき、こういうことが起きるのは承知の上だった。自分以外を責めることはできないし、嫌なら来なければよかっただけの話だ」
「でも、本当に大変なのは1,500人のチームメンバーたちだよ。『あの人を替えろ』なんて報道が出たら、それは単なるポジションじゃない。一人ひとりに家族がいる。月曜になると、『これ本当ですか?』って聞きにくる人がいるんだ。『いや、違うから落ち着いて』って答えるしかない」
「こういう報道は、緊張感というよりは“乱れ”をチームに持ち込む。そして最終的に、我々は他チームと競争している。集中力が削がれれば、その分だけ負けることになる」