
ルイス・ハミルトンが、選手権を争うオスカー・ピアストリに「もうポジションを譲るな」と短く鋭い助言を送った。発言はシンガポールGPのメディアデーで問われた際のもので、マクラーレン内で高まるノリス—ピアストリ間の緊張を踏まえたコメントだ。ピアストリはイタリアGPでチームオーダーによりノリスへ順位を譲り、シンガポールでもオープニングラップの接触が議題になった経緯がある。ハミルトンはその流れを踏まえ、これ以上は譲るなと明確に線を引くべきだと示した。
当のピアストリもこの助言を伝え聞くと、苦笑いを交えつつ「彼は何度もその立場を経験してきた人だ。アドバイスは受け止める」と応じ、7度のチャンピオンの言葉を重みをもって受け入れた。背景には、タイトル争いの只中で譲歩が累積的な不利を生むというトップドライバーの実戦知がある。チームの和と個人の王座戦略という二律背反の中で判断はますますシビアになる。
この件は、マクラーレンがコンストラクターズ連覇を決めつつも、ドライバーズ選手権では両雄が拮抗する現状を象徴する。ハミルトンの短い一言は、ピアストリに決断を促すと同時に、マクラーレンのガバナンスをも揺さぶる。