
マクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリが、F1オーストリアGPでの一瞬のチーム内バトルを振り返った。アンドレア・ステラは、ターン4での接近に関して、オーストラリア人ドライバーの潔い対応を称賛した。
レースの展開について
ノリス:「チェッカーを受けた瞬間だね! そこが一番楽しかった。でもその前もオスカーとのファーストスティントはすごく楽しめた。接近した瞬間やいいバトルがたくさんあった。ターン1からターン3までミラーを見っぱなしで、本当にストレスフルだったし、居心地の良いポジションではなかったけど、いい戦いだったと思う。その後はレースが長く感じたよ。ギャップが広がらなくて、オスカーはその後の2スティントでも僕に迫ってきたからね。だから楽しいけど難しいレースだった。よくマネージできたと思うよ。特に第1スティントはね。スタートから10周くらいで5秒のギャップがついた。
ピットのウィンドウがどのあたりになるかはわかっていたし、そのペースじゃ間に合わないって思っていた。オスカーもプッシュしていたし、すぐにフェラーリとの戦いじゃないと分かった。目は前を向いていた。でも第1スティントはバッテリーのチャージができなくて苦しかった。だからいつも守りに入らざるを得なかったんだ。でもピットイン後は久しぶりにバッテリーをしっかり使えて、そこから少し楽になったんだ。」
ピアストリ:「ターン1でルクレールを抜けたことが大きかった。最初からDRS圏内にいられたし、このコースではDRSがすごく強力だからね。だから序盤のバトルでは助けになった。その後、すぐにこれは僕ら2人の戦いになるって分かった。重要な瞬間だったと思う。」
ノリスvsピアストリ
ノリス:「いいバトルだったと思うよ。過去にもいくつか戦いはあったけど、今回ほど長く続いたことはなかったかもしれない。でもお互い何を期待しているか分かっていたと思う。ハードに、でもフェアに戦いたいって気持ちは同じだ。モントリオールの件は過去のこととして片付けたいし、あんなことはもう起きてほしくない。でも今回のバトルでは限界を攻め合えて楽しかった。接近した瞬間もあったけど、アンドレアやピットウォールが心配するほどのことはなかったと思う。」
ピアストリ:「前にも何度か戦ってるし、去年も一昨年もあったから、どうなるかは分かっていた。激しい戦いだったし、僕の方が少し攻めすぎたところもあったと思う。でもこれはF1で優勝を争っているんだ。当然、激しくなる。見ている人にとっても面白いレースだったと思う。最初のピットストップ後、ランドに少し自由を与えすぎたかもしれないけど、最初の20周はかなり激しかった。いいバトルだったよ。」
ステラ:「まず、僕たちのドライバー2人のレースを誇りに思っている。これこそがマクラーレンF1チームにとって理想の姿だ。我々はレースのためにここにいる。2人の才能を最大限に発揮させたいし、それぞれの目標を達成させたい。でもそれは、共に築き上げてきたアプローチと原則の中で成り立つべきだ。今日のバトルはまさにその通りだった。唯一、2台が少し接近しすぎたのはターン4だった。オスカーがロックアップしてランドに近づきすぎた場面だ。
この件はフィードバックとしてオスカーに伝えた。テレビに映ったかどうかは分からないが、フィニッシュ後すぐにオスカーがラジオで『ターン4の件、ごめん。僕のミスだ。何をすべきか分かってる』と言ってきたんだ。すべてが明確だった。我々はカナダの件もチームとして冷静に受け止め、より強く団結してここまで来た。」
カナダ後の巻き返し
ノリス:「うん、自分にとってはかなり満足できる結果だし、自信になったよ。誰かに何かを証明したいわけじゃなくて、自分自身に証明したいんだ。FP2以降はずっといい感触だったし、クルマを完全に掌握できていた。まさに自分がやりたかった通りのパフォーマンスができた。クリーンな週末だった。それだけのことだ。今までできなかったわけじゃないし、ペースはいつだってあった。ただ色々な要因が絡んでいたんだ。でも今回は、その準備が実った結果だと思っている。
簡単なことじゃないよ。今週末急に調子が良くなったわけじゃない。僕は以前よりもずっと多くの作業をしている。シミュレーターでの作業、チームとの準備、そしてトラック外での自分の向上にも取り組んでいる。今回、それがすぐに結果に出たのはポジティブだと思う。正しい方向に進めている。でも、まだ足りない。もっと欲しいんだ。だからこれからも頑張るよ。」
戦略について
ピアストリ:「自分が後にピットインするのは分かっていた。だからDRS圏内から外れたら、1秒以内に戻るのがすごく難しいのも分かっていた。だから違うアプローチを取りたかったんだ。タイヤを新しくして、スティント終盤に活かせればと思った。でも、うまくはいかなかったね。それでも、その時点では何か違うことを試してみる価値はあったと思う。後で振り返ってみて、それが正しかったかはまた考えたい。
正直、1周遅れてピットに入るだけでも時間は失うから、それなら違うことをやってみようと考えたんだ。過去にもDRS圏外にいて、苦しんだ経験があったからね。今回は違う展開にしたかった。でも結果としてはうまくいかなかったかもしれない。それも後から見て分かることだよね。」
ステラ:「最初の選択肢は、先にピットインしたドライバーの次の周に入ること。これならタイヤの年数はほぼ同じで、差は数秒以内に収まる。もう一つは、ピットを遅らせて“タイヤデルタ”を作る戦略だ。ピット後にはより新しいタイヤで相手との差を詰めることができる。ただ今回はランドの第2スティントでのハードタイヤの速さが際立っていた。そのため、オスカーのタイヤアドバンテージが活かしきれなかった。
オーストリアは特殊なサーキットで、DRSの効果が非常に大きい。2台の性能が近い場合、後方のクルマは前に簡単についていける。第1スティントではまさにそうだった。しかし第2スティントでは、ランドが守る必要がなくなった分、ほんのコンマ1秒程度のペース差を活かして戦略的に優位に立った。」
ターン4の件について:
ピアストリ:「うん、フェアな指摘だと思う。ロックしてチームメイトの後ろに突っ込みそうになるのは、明らかにギリギリだった。たとえ何も言われてなかったとしても、もう一度あれをやろうとは思わない。フェアなコメントだし、それ以上でも以下でもない。」
ステラ:「オスカーがすぐに謝罪したことで、彼自身があのタイミングでの判断ミスを理解していることが分かった。特にスティント中盤でフロントタイヤが消耗していた時にギャップを突こうとすると、コントロールが効かなくなる可能性がある。ロックアップはつまり車両のコントロールを失っているということだ。今後もこうした不確定要素によって接近が決まってしまうのは望ましくない。我々としても、そしてオスカー自身の見解としても一致している。こうした状況は常にチーム全体で建設的に振り返り、さらに改善していく。」
無線でのやり取りについて:
ステラ:「技術的に言えば、第1スティントでオスカーはランドの後ろでDRSを使っていたから、ランドは常にプレッシャーを受けていた。バッテリーを使ってポジションを守る必要があり、その結果ミッドセクターや最終セクターでバッテリーを回収していた。こういう状況では、エンジンやタイヤをどう使うか、すべてを最大限に活かさなければならない。だから無線でのやり取りは不可欠だった。
第2スティントでは、ランドのタイヤの方がオスカーよりも4〜5周古く、その分タイム的に約0.2秒不利だった。こうした状況でもすべてを活かす必要があるため、エンジニアとのやり取りが行われていた。オスカー側でも無線はあったが、第1スティントは比較的明確だったと思う。」
ピアストリが遭遇した角田裕毅、コラピントとの接触寸前
ピアストリはフランコ・コラピントと周回遅れの際に危険な場面に遭遇した。アルゼンチン人のコラピントは、周回遅れの中で角田裕毅をターン4で抜こうとしたがコース外に飛び出し、角田が抜き返す展開となった。
その直後、直線でコラピントが角田を再び抜こうとしたタイミングで、ピアストリが背後から接近。視界の外にいたピアストリをコラピントが認識できず、彼はピアストリを芝生へ押し出すかたちとなった。この件でコラピントには5秒ペナルティが科された。
コラピント:「本当に見えなかった。死角にいたし、僕は彼(角田)に集中していた。とにかく抜きたくて仕方がなかった。でも、気づいた時にはすぐに動いた。ペナルティが出たのは仕方ないと思っている。」