ハースF1チームはトヨタと技術提携を結び、その架け橋となるのが、元ルノー・アルピーヌのエンジニア、ピエール・ジェノンとなる。ジェノンは、トヨタとの連携を統括する「トヨタ・プロジェクト・マネージャー」としてハースに加入し、チーム本拠地イギリス・バンバリーと、トヨタ・ガズー・レーシングの本拠地ドイツ・ケルンを結ぶ役割を担う。ジェノンは自身のLinkedInで以下のようなコメントをしている。
「私はついにマネーグラム・ハースF1チームにトヨタ・プロジェクト・マネージャーとして加わることになり、非常に興奮している。このプロジェクトの推進が私の責任であり、ハースF1とトヨタ・ガズー・レーシングの協力関係を強固にすることが使命だ。私はこのチーム、プロジェクト、そしてパートナーについてすべてを学ばなければならない。しかし、チャレンジに向けたエネルギーは100%満タンだ。新しいチームメイトと出会い、このプロジェクトを通じてチームの前進に貢献することを楽しみにしている。」
復帰に向けた布石を打つも慎重なコメント
トヨタは2009年を最後にF1から撤退し、その後はWEC(世界耐久選手権)やWRC(世界ラリー選手権)で成功を収めてきた。しかし、2024年10月にハースとの技術提携を発表したことで、再びF1への関与を強めている。
一連の動きはトヨタF1復帰と無関係であるはずはなく、内部では2026年レギュレーションの調査やその後数年の見通し、準備計画スケジュールの精査が開始されているのだろうが、同社のモータースポーツ部門を率いる加治正哉氏は慎重なコメントを残している。加治氏はMotorsport.comに対し、
「私たちは2026年のF1レギュレーション、そして現行の技術について研究を進めている。確かにF1に向かって少しずつ動いてはいるが、今すぐ復帰する段階にはない。2030年以降の展開は不透明であり、F1がトヨタの技術開発の方向性と合致するかどうかはまだ分からない。」
と語った。また、F1チームを持つことでドライバー育成に有利になる点についても言及している。
「自社チームがあれば、どのドライバーを起用するかを決められるという点でF1参戦には意味がある。しかし、F1チームを運営するには莫大な資金と人的リソースが必要になるため、今すぐ決断することは現実的ではない。まずはハースとの提携を通じて様々なチームと協力しながら、できることを積み重ねることが重要だ。」
トヨタ関連ドライバーの動向も活発化、アルピーヌとの関係にも注目集まる
トヨタのF1復帰を巡る動きの中で、ドライバー育成の強化も進んでいる。トヨタと関係の深い平川亮は、2025年アルピーヌのリザーブドライバーに就任している。平川は2024年シーズンの最終戦アブダビGPでマクラーレンのFP1に出走しており、2025年はアルピーヌの一員として日本GPのFP1にも出場予定である。
また、トヨタはF2のチーム「ハイテックGP」との提携も発表した。ハイテックGPはアルピーヌの現チーム代表であるオリバー・オークス氏が設立したチームであり、アルピーヌとの関係強化が噂されている。この動きにより、一部ではアルピーヌF1チームの将来的な売却や合併の可能性が取り沙汰されている。