
FIA(国際自動車連盟)は10月2日、2025年のシンガポールGPについて、F1で初となる「ヒート・ハザード」を宣言した。高温多湿の予報を受け、極端な熱環境が安全上のリスクとして公式に認定された格好だ。今回の指定は、2023年カタールGPで複数のドライバーが極度の脱水や体調不良に見舞われた事案を踏まえ導入された新プロトコルの初適用となる。
週末は気温31℃超が見込まれ、FIAの“発動閾値”を満たす見通し。ヒート・ハザードが宣言されると、各マシンにはドライバー冷却システム一式(ポンプ、配管、熱ストア等)を装備し、作動可能な状態に保つことが求められる。2025年は冷却ベスト(循環式の冷却液を流すウェア)の着用自体は任意だが、搭載による重量面の不利益が生じないよう救済措置が設けられている。
シンガポールは従来からコクピット温度が体感50〜60℃に達するとも言われる。FIAは雨天や落雷と同様に「熱」を定量化されたハザードとして扱い、状況に応じ追加の安全策を発動できる枠組みを整備した。
一方で、冷却ベストの有効性や装着感についてはドライバー間で見解が分かれており、FIAは2026年に向けた義務化や運用細則の最適化を引き続き検討する。安全を軸にした新基準は、都市型ナイトレース特有の過酷な環境下で、パフォーマンスとコンディション維持のバランスをどう取るかというF1の新しい課題を突きつけている。