
ギュンター・シュタイナーが投げたひと言が、マラネロに冷たい風を吹き込んだ。「フェラーリの中には、ルイス・ハミルトンのためにカルロス・サインツを手放したことを後悔している者がいるはずだ」
——前ハース代表はそう断じだ。事の背景には、今季の象徴的な週末がある。バクーでウイリアムズのサインツが会心の走りで3位表彰台を獲得した一方、フェラーリのハミルトンとルクレールは中団でもがいた。投じた巨大な賭けに見合う成果は、まだ手にできていない。
シュタイナーは「単発の結果に浮かれ過ぎないように」とウイリアムズの快挙を例外と冷静に評価しつつも、サインツの着実さと落ち着きを高く買う。対照的に、フェラーリ側には新時代の看板獲得が生んだ喧噪と期待の重さがのしかかる。チーム再建の要に据えたハミルトンは、いまだ表彰台に届かず、開発とオペレーションの歯車が噛み合っていないようにみえる。サインツとアルボンは長く低迷していたウィリアムズのマシンで確実に点を積み上げている。