
マクラーレン独走が色濃い今季だが、パドックの視線はむしろ“次点の王座”を懸けた後方決戦に集まっている。最新のチーム順位では、「2位メルセデス290点」、「3位フェラーリ286点」、「4位レッドブル272点」。わずか18点差の射程に3陣営が収まり、残り戦数の一撃で順位がひっくり返る緊迫の情勢だ。
流れを変えたのは直近のアゼルバイジャンGPだった。ジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリが大量得点を持ち帰り、メルセデスが2位の座を奪取。対してフェラーリはポイントの積み上げが伸び悩み、レッドブルはフェルスタッペンの優勝で反攻の狼煙を上げつつも、なお背中を追う展開だ。ここへ来てどのチームが安定してダブル入賞を刻めるか、様相は収れんしている。
数字が雄弁に語るものがある。首位マクラーレンは623点でタイトルに手をかけるが、2位以下は紙一重。メルセデスはアップデートの当たりを背景に底堅さを取り戻し、フェラーリは予選一発の強さを武器に機をうかがう。レッドブルはフェルスタッペンの連勝で再点火し、角田裕毅の入賞力が積み上げの生命線となる。目先の1ポイントが年末の数百万ドルに化ける世界で、ピットストップの0.5秒やセーフティカーの1周が、そのまま序列の上下を決めかねない。
舞台はハイダウンフォースの市街地から、暑熱と路面コンディションが読みづらいアジア・中東ラウンドへと移る。タイヤウィンドウに入るか外れるか、戦略の読みが当たるか外れるか——その誤差は2位と4位を分ける致命的な差に膨らむ。最後に笑うのは、再現性を欠かさないチームだ。