メルセデスの新人アンドレア・キミ・アントネッリが、経験済みのサーキットよりも、初見のサーキットで強いという傾向を示している。カナダの3位、オーストラリアとアゼルバイジャンの4位、そしてサンパウロの2位と好成績となったサーキットはいずれも初見だった。

下位カテゴリー時代から、コース学習の速さとセットアップ適応力に優れ、F1でもその資質が表面化した。初走行日からブレーキングや縁石の使い方を素早く把握し、金曜終盤にはロングランと予選シミュレーションの両立が可能な、妥協の少ないセッティングに到達している。

未知のコースで求められるのは、路面情報が乏しい中でのタイヤ作動域の早期特定と、風向や路面温度の変化に対するマージン設計だ。アントネッリはイン・アウトラップの温度管理を丁寧に積み上げ、コーナーごとのヨーの立ち上がりを乱さないペダルワークでデグラデーションを抑制する。これが予選での一発と決勝での平均ペースの双方を底上げし、初見トラックでも“崩れない”週末運びを可能にしている。

一方で、データ量が増える既知のサーキットでは、最速解に向けて細部を詰める段階で経験豊富なライバルの上積みに苦しむ場面もある。白紙に近い条件ほど直感と基礎技術で差を埋めやすいのに対し、微細な空力バランスや路面の癖を前提にした最適解勝負になると、経験差が表れやすい。

次戦ラスベガスは初見だが、カタールとアブダビはF2で経験済みだ。初見での強さをベースに、既知コースでも決勝ペースの安定度とスタート直後の位置取りを磨けるか。アントネッリの完成度が、メルセデス再建の速度を左右する。