フェラーリ会長ジョン・エルカーンによる異例の叱責が、イタリア国内のスポーツメディアを席巻している。発言の波紋は広がり、国内の主要紙やテレビ局で意見が真っ二つに割れている。

ミラノでの会見でエルカーンは、フェラーリのドライバーたちに対し「もっと黙って(ドライブし)、フェラーリのことを考えるべきだ」と述べた。この言葉が誰に向けられたものなのか議論が絶えないが、多くの関係者は矛先がルイス・ハミルトンに向けられていると見ている。

コリエーレ・デッラ・セーラ紙のダニエレ・スパルイシは、会長の怒りの矛先が明確にハミルトンに向いていたと指摘した。

「シャルルの発言のいくつかも不快に映ったかもしれない。しかし、メッセージはハミルトンに向けられていた。蜜月は終わったのだ」
「エルカーンは彼のパフォーマンス、そして態度に失望している。ハミルトンはまだ一度も表彰台に立っておらず、しばしば批判的な発言をしている。チーム内の文書問題からFIAのペナルティに至るまで、常に声を上げている。ブラジルGPではスチュワードを『ジョークだ』と呼び、コラピントとの接触で5秒加算ペナルティを受けた。こうしたスキャンダルは、フェラーリが最も避けてきたものだ」

一方で、スカイ・イタリアのカルロ・ヴァンジーニは冷静さを呼びかけた。

「いま必要なのは沈黙だ。ドライバーだけでなく、経営陣も含め、チーム全体が口を閉ざすべきだ」
「ライバルと比べても、チーム内での数字を見ても、フェラーリの現状は恥ずかしい。だからこそ、今こそ皆が沈黙し、立て直す時だ。考えを整理し、問題を修正し、ファンが再び愛せるマシンを作るべきだ」

ガゼッタ・デッロ・スポルト紙のルイジ・ペルナは、批判の矛先をドライバーからチーム全体の構造的問題へと移した。

「フェラーリは今季、トップチームの中で唯一まだ1勝も挙げていないチームだ」
「最後の勝利は2024年メキシコGPのカルロス・サインツによるもので、そのサインツを放出してハミルトンを迎えたのが今のフェラーリだ。結果、25戦連続で未勝利という、チーム史上6番目に長い不名誉な記録となっている」

さらに、会長エルカーンがフレデリック・バスール代表に対して依然として信頼を置いているのか疑問視する声も高まっている。だがエルカーンは『コリエーレ・デッロ・スポルト』に対し、現時点ではバスールを支持していると語った。

「彼はチームを再びトップに戻すために、仕事に完全に集中している」とエルカーンは述べた。そして、彼は耐久レースでの成功と比較するように強調した。

「我々はWEC選手権での偉大な勝利を心から喜んでいる。困難な年ではあったが、団結によって成し遂げられた勝利だった」

エルカーン会長の発言は、名門フェラーリの誇りと焦燥を象徴している。25戦勝てない現実と、頂点を奪還するための道のりは、決して容易ではない。